旅行業の論点~区分毎の業務範囲及び登録要件、許可の申請手続きの流れと注意事項~
2023年11月6日
旅行業登録とは
旅行業法においては、報酬を得て法律の定める一定の行為を行う事業を営もうとする者は、観光庁長官又は都道府県知事による旅行業の登録を受けなければならないとされています(旅行業法第2条及び第3条)。ここでは、「旅行業」の許可申請について、概要や注意事項を中心に説明します。
「旅行業」は、業務範囲に応じて「第1種」、「第2種」、「第3種」、「地域限定」と登録種類が4種類に区分されます。このうち「第1種」は観光庁長官が登録申請先で、それ以外の種類は(主たる営業所の所在地を管轄する)都道府県知事となります。
なお、「旅行業」と違い「旅行業者代理業」は旅行業者から委託された他社の商品を代理で販売することだけが許され、自社の企画商品も販売できる「旅行業」の業務範囲とは大きく違います。また登録の申請方法も「旅行業」とは異なる扱いとなりますので、「旅行業者代理業」についてはここでは割愛します。
(1) 旅行業の区分と業務範囲
まず、観光庁のHPにて旅行業の区分、業務範囲や登録要件などがまとめられた図(一部抜粋)がありますので、その図を基に原則を説明していきます(参照元)。
前述のとおり、「旅行業」は、業務範囲に応じて4種類に区分されます。その業務範囲とは大きく3種類に区分されるので、以下種類ごとに説明致します。まず、1)「募集型企画旅行」こちらは、旅行業者が、予め旅行計画を作成し、旅行者を募集するもの(ex.パッケージツアー)。次に、2)「受注型企画旅行」こちらは、旅行業者が、旅行者からの依頼により、旅行計画を作成するもの(ex.修学旅行)。最後に、3)「手配旅行」こちらは、旅行業者が、旅行者からの依頼により宿泊施設や乗車券等のサービスを手配するもの。となります。
以上の3種類に業務範囲が大別され、「募集型企画旅行」の中でもさらに海外旅行と国内旅行の取り扱いの違いで登録種類が異なります。具体的には、海外旅行を取り扱う場合は、「第1種」の登録が必要である一方、国内旅行のみを取り扱う場合は、「第2種」の登録が必要です。「第3種」はパッケージツアーを組まず、いわゆるオーダーメイドである「受注型企画旅行」だけを取り扱う場合に該当します。最後に、「地域限定」は営業所のある市町村と隣接市町村を範囲とする区域に限って企画旅行(募集型企画旅行のうち海外旅行は取扱不可)、手配旅行が実施できる旅行業です。
(2) 登録要件
登録要件は大きく「営業保証金(弁済業務保証金)」、「基準資産」、「旅行業務取扱管理者の選任」に大別され、順に説明致します。まず、「営業保証金(弁済業務保証金)」とは制度趣旨として旅行業者と取引した旅行者の保護を図るため、旅行業法は旅行業者に一定の金額を営業保証金として供託することを義務付けています。また、上記の図の通り登録種類に応じて供託金額が設定されています。なお、「営業保証金」を供託する代わりとして「弁済業務保証金」という制度が存在します。こちらの詳細については「3.注意事項」で後述致します。次に、「基準資産」とは制度趣旨として旅行業者が事業を遂行するための財産的基礎を有しているか観光庁長官又は都道府県知事が確認するためのものです。こちらも登録種類に応じて金額が設定されています。なお「旅行業」は5年毎の更新が必要で、更新の際にも定められた「基準資産」を満たしている必要があります。最後に、「旅行業務取扱管理者の選任」についてですが、「旅行業」の登録種類に関わらず管理監督者として営業所毎に1人以上選任することが必要です。また「旅行業務取扱管理者」は国内外の業務を取り扱うことが出来る「総合旅行業務取扱管理者」、国内の業務のみ扱うことが出来る「国内旅行業務取扱管理者」、隣接市町村までの業務のみを扱うことが出来る「地域限定旅行業務取扱管理者」の3種類に分かれます。なお、旅行業務取扱管理者として選任できる者は、旅行業者の営業所の扱う業務の範囲により、必要な資格を有する者が異なっていますので注意が必要です。
許可を得る手順とは
旅行業許可の申請手続きの流れは、登録種別で多少異なりますが、ここでは第2種の旅行業登録を行うことを想定した流れをご案内します。
1)事前相談
2)申請書類の作成
3)内容審査(営業所の調査含む)
4)登録通知受領
5)新規登録手数料の納付
6)登録の通知を受けた日から14日以内に下記手続きを行うこと。
① 旅行業協会へ加入しない場合
登録通知受領後、所要の営業保証金を法務局に供託し、届け出る。
② 旅行業協会へ加入する場合
登録通知受領後、所要の弁済業務保証金分担金を旅行業協会へ納付し、届け出る。
③ 登録票・旅行業務取扱料金表の用紙を購入し、必要事項を記載のうえ掲示する。
注意事項
(1)「弁済業務保証金」について
旅行業協会の所属社員(旅行業者)が本来の営業保証金の5分の1に当たる額の弁済業務保証金分担金を納付し、旅行業協会がこの分担金を一元的に弁済業務保証金として供託することで、所属社員相互で本来の営業保証金に相当する額を連帯保証させるというもので、各所属社員が本来供託義務を負っている営業保証金の負担を軽減させる働きがあります。
(2)「旅行業務取扱管理者制度の改正」について
上記制度の改正について説明する前に、前提として旅行業務取扱管理者になる為には、今まで「総合旅行業務取扱管理者試験」又は「国内旅行業務取扱管理者試験」に合格した者である必要がございました。それが平成29年11月の改正に伴い、地域に限定した知識のみで取得可能な「地域限定旅行業務取扱管理者試験」が創設され、なおかつ1名の「旅行業務取扱管理者」による複数営業所兼務の解禁(「地域限定」の旅行業者に限る)があり「旅行業務取扱管理者」の営業所への配置に関する規制が緩和されました。