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前川 研吾 Kengo Maekawa

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前川 研吾 Kengo Maekawa

ファウンダー&CEO  / 公認会計士(日本・米国) , 税理士 , 行政書士 , 経営学修士(EMBA)

NASDAQ(ナスダック)上場の概要とその留意点

2023年11月21日

はじめに

(1) NASDAQ上場の背後にある意義

昨今日本企業のNASDAQ(ナスダック)上場が注目を浴びています。NASDAQ上場の意義は、企業にとって多岐にわたります。まず、NASDAQは世界で2番目に大きな株式市場であり、上場企業にとって広範な投資家層へのアクセスを提供します。これにより、資金調達と成長の機会が増加し、企業の発展が可能となります。

また、NASDAQ上場は企業の知名度を向上させ、評判を高める効果があります。これは新たな提携やビジネス機会の拡大につながり、企業価値の向上に寄与します。NASDAQは高い流動性を持つ市場であり、株価の正確な反映が期待されるため、投資家にとっても魅力的な場所となります。

(2) NASDAQ上場の概要(NASDAQとは何か、歴史、上場メリット等)

本コラムは、NASDAQとは何か、その歴史や上場することのメリット等について解説します。NASDAQへの上場には、IPO以外に、ダイレクトリスティングやSPACなどもありますが、ここではIPOについてご紹介します。

上場承認プロセスや上場要件・規制についても理解を深め、上場企業が直面するリスクについても触れています。日本市場よりも早期に上場でき、資金調達金額も大きくなることから、NASDAQ上場は注目を浴びていますが、費用面についても米国弁護士の報酬をはじめ非常に高額になることについては留意しておく必要があります。日本で上場するよりもスムーズに進んでも2倍程度は要するとも言われます。NASDAQ上場の未来と可能性を検討する際の一助になれば幸いです。

NASDAQの概要

NASDAQ(ナスダック)とは、「National Association of Securities Dealers Automated Quotations」の頭文字を取った略称であり。アメリカの主要な株式市場の一つを指し、主にハイテク企業やIT関連企業などの新興企業向けの株式市場になります。代表的な銘柄には、アップル、アマゾン、アルファベット、メタプラットフォームズ、マイクロソフト、テスラ、インテル、コムキャスト、ペイパル、シスコシステムズなどが挙げられ、現在では日本企業も数社NASDAQに上場しています。

NASDAQは1971年に設立され、全米証券業協会(National Association of Securities Dealers)が運営する電子株式市場として始まりました。この新しい取引所は、伝統的な取引所と異なり、電子取引を導入しました。それに伴い、世界初の電子株式市場としての地位を確立し、証券の取引が迅速かつ効率的に行えるようになりました。

また、新興企業向けの株式市場であることから、成長産業やテクノロジー企業の上場をサポートする場として急速に成長しました。今では多くのIT企業が上場先としてNASDAQを選択し、その成功により市場の重要性が高まりました。日本企業もNASDAQ上場を通じて国際市場での認知度を高め、資金調達の機会を活用しています。

NASDAQ上場のメリット

NASDAQへの上場には、以下のメリットがあります:

  • 上場準備期間が短い:日本と比較して、NASDAQは上場までの準備期間が短く、一定の基準に満たない企業は内部統制監査が一定期間免除されるため、早く上場を実現できます。
  • 多額の資金調達額が可能:調達資金も日本の市場に比べて多く調達できることが一般的です。そのため、多くの企業がNASDAQ市場を選択し、成長と国際展開を実現しています。
  • グローバル展開と知名度向上:米国市場でのIPOにより、企業の国際的な知名度と信用力が向上し、国際展開が迅速に進む可能性が高まります。
  • 国際機関投資家へのアクセス:米国を中心に活動する国際的な機関投資家とのアクセスが容易になり、調達資金が増加します。
  • 優秀な人材の確保:インセンティブプランの導入により、優秀な人材を採用しやすくなります。
  • 高い株式流動性:上場後の株式の取引が活発に行われることから、株式の流動性が高まり流通時価総額も大きくなります。
  • 利益が出ていなくても上場可能:成長中の企業は、利益を上げていなくてもNASDAQに上場できます。
  • 議決権株式の活用:優先株式や無議決権株式など、複数の議決権株式を利用している企業もNASDAQに上場可能です。
  • 買収の柔軟性:上場している自社株式を使った株式交換等の手法により、現金を支払わずに海外企業を買収することが可能です。
  • 新たな産業の上場:新たな産業分野(例: 暗号資産、ブロックチェーン関連企業)に対しても他の株式市場と比較し相対的に上場しやすい傾向にあります。

NASDAQ上場のプロセス

(1) NASDAQ上場申請から承認までのステップ

上場申請から承認までのステップは以下の通りです。主にSEC(米国証券取引委員会; U.S. Securities and Exchange Commission)とのやり取りが中心になります。

  1. 英文の目論見書「Form F-1」をSECに提出
  2. SECによる審査開始
  3. SECからコメントレターを受領
  4. コメントレター対応
  5. SECによる承認

もう少し詳細に解説します。

まずNASDAQに上場申請するためには、「Form F-1」と呼ばれる英文の目論見書をSEC(米国証券取引委員会)に提出する必要があります。このForm F-1は前段の財務情報以外のパートと後段の財務諸表のパートに分かれており、財務諸表は会計監査人による監査が必要となっています。

Form F-1をSECに提出すると審査開始となり、数週間後にSECから指摘事項・質問事項をまとめたコメントレターが送付され、企業はそのコメントレターに記載されている各項目について回答・修正を行います。

修正事項があれば再度修正したForm F-1をSECに提出し、SECからコメントがなくなるまでこのプロセスを繰り返します。SECからのコメントを全て対応した時点でForm F-1が承認され、晴れて上場承認に至ります。

(2) NASDAQ上場要件と規制の詳細

NASDAQには以下の3つの市場が存在します。

①Nasdaq Capital Market

成長を続ける企業、特に小規模の企業が対象です。上場要件は三つの市場の中で最も緩やかで、これによりより小さな、成長が期待される企業が公開市場から資本を調達することが可能になります。企業の財務状態、株式の流通量、株主数、株価、売上高などの基準がありますが、これらはNasdaq Global MarketやNasdaq Global Select Marketの基準よりも低めに設定されています。

②Nasdaq Global Market

中規模の企業を対象とした市場で、NASDAQ Capital Marketよりも高い上場基準を設けています。この市場に上場する企業は一定の収益性と規模を満たしていなければならず、それによってより安定した投資機会を提供することが意図されています。Nasdaq Global Marketは世界的な規模での投資家への露出を提供し、より厳格な財務要件を満たすことで、信頼性の高い市場環境を提供します。

③Nasdaq Global Select Market

NASDAQの市場の中で最も高い上場基準を有する市場です。上場を希望する企業は、財務基準、流動性、会社の規模などの面で最も厳しい要件をクリアする必要があります。Nasdaq Global Select Marketに上場している企業は、経営実績、透明性、および良好なコーポレートガバナンスが特に高いレベルであるとみなされています。

上場要件については、上記3つのうちどの市場に上場するかによって異なっています。NASDAQでの上場市場の選択は、企業が達成しようとしている財務戦略と成長目標に大きく関係していきます。市場区分ごとに上場要件を見ていきましょう。Nasdaq Continued Listing Guideを参考にまとめています。なお、ダイレクトリスティングに関する詳細な要件については省略しています。

【Nasdaq Global Capital Market】

1〜3のうちいずれかを満たせば上場要件を満たします。

上場要件1.株主資本基準2.上場株式の時価総額基準3.利益基準
上場規則5505(a)および5505(b)(1)5505(a)および5505(b)(2)5505(a)および5505(b)(3)
株主資本5百万ドル4百万ドル4百万ドル
自由に売買可能な公開株式の時価総額1,500万ドル1,500万ドル5百万ドル
税引前事業利益(直近会計年度または直近3年のうち2年)75万ドル
自由に売買可能な公開株式1百万株1百万株1百万株
自由に売買可能な1単元株主300人300人300人
マーケットメーカー3人3人3人
入札価格または終値4ドルまたは 3ドル4ドルまたは 2ドル4ドルまたは 3ドル

【Nasdaq Global Market】

1〜4のうちいずれかを満たせば上場要件を満たします。

上場要件1.利益基準2.株主資本基準3.時価総額基準4.総資産及び収益基準
上場規則5405(a)および
5405(b)(1)
5405(a)および
5405(b)(2)
5405(a)および
5405(b)(3)
5405(a)および
5405(b)(4)
税引前事業利益(直近会計年度または直近3年うち2年)1百万ドル
株主資本1,500万ドル3,000万ドル
上場株式の時価総額7,500万ドル
総資産と収益の合計(直近会計年度または直近3年のうち2年)7,500万ドル および 7,500万ドル
自由に売買可能な公開株式110万株110万株110万株110万株
自由に売買可能な公開株式の時価総額800万ドル1,800万ドル2,000万ドル2,000万ドル
入札価格4ドル4ドル4ドル4ドル
自由に売買可能な1単元株主400人400人400人400人
マーケットメーカー3人3人4人4人
事業運営期間2年

【Nasdaq Global Select Market】

1〜4のうちいずれかを満たせば上場要件のうち財務要件を満たします。なお、上場するためには財務要件のほかに流動性要件も満たす必要がありますが、流動性要件は上場方法によって要件が変わってくるためここでは省略しています。

上場要件1.利益基準2.キャッシュフロー及び時価総額基準3.収益及び時価総額基準4.総資産及び株主資本基準
上場規則5315(e)および
5315(f)(3)(A)
5315(e)および
5315(f)(3)(B)
5315(e)および
5315(f)(3)(C)
5315(e)および
5315(f)(3)(D)
税引前事業利益直近3会計年度で合計 > 1,100万ドル および 直近3会計年度の各年度 > 0 および 直近2会計年度の各年度 > 220万ドル
キャッシュフロー直近3会計年度で合計 > 2,750万ドル および 直近3会計年度の各年度 > 0
時価総額直近12か月の平均 > 5億50百万ドル直近12か月の平均 > 8億50百万ドル1億60百万ドル
収益直前の会計年度 > 1億10百万ドル直前の会計年度 > 9000万ドル
総資産8,000万ドル
株主資本5,500万ドル
入札価格4ドル4ドル4ドル4ドル

また、上場後にも上場維持要件がありますが詳しくはNasdaq Continued Listing Guideをご参照下さい。

NASDAQ上場した日本企業の事例

(1) NASDAQ上場した日本企業の事例紹介

記事執筆時点でNASDAQに上場している日本企業をご紹介します。

No.企業名ティッカー業種上場年マーケット手法
1くら寿司(Kura Sushi USA, Inc.)KRUS飲食店 & バー2019年NASDAQ Global Market米国子会社上場
2メディロム(MEDIROM Healthcare Technologies Inc.)MRMヘルスケア・ウェルネス2020年Nasdaq Capital MarketADR上場
3吉通貿易(Yoshitsu Co., Ltd)TKLF専門商社2022年Nasdaq Capital MarketADR上場
4ハートコア(Heartcore Enterprises, Inc.)HTCRソフトウェア2022年Nasdaq Capital Market米国親会社上場
5A.L.I.テクノロジーズ(AERWINS Technologies Inc.)AWIN航空宇宙・防衛2023年Nasdaq Global MarketSPAC
6シーラテクノロジーズ(SYLA Technologies Co., Ltd.)SYT不動産サービス2023年Nasdaq Capital MarketADR
7Warrantee(Warrantee Inc.)WRNTマーケティング・市場調査テクノロジー2023年Nasdaq Capital MarketADR
8アーリーワークス(Earlyworks Co., Ltd.)ELWSソフトウェア・コンサルティング2023年Nasdaq Capital MarketADR
9ピックシーダストテクノロジーズ(Pixie Dust Technologies, Inc.)PXDTIT サービス・コンサルティング2023年Nasdaq Capital MarketADR
10リード・リアルエステート(Lead Real Estate Co., Ltd.)LRE不動産開発2023年Nasdaq Global MarketADR

ご覧の通り、NASDAQに上場するにはIPO、ADR、SPACと3つの方法があります。それぞれ3つの上場方法について3社ピックアップをし、事例を交えて記事を執筆しましたのでをぜひご覧ください。
IPO:NASDAQ上場事例:ハートコア
ADR:NASDAQ上場事例:シーラテクノロジーズ
SPAC:NASDAQ上場事例:A.L.I. Technologies

(2) 過去NASDAQ上場していた日本企業の事例紹介

過去NASDAQへ上場していたものの、現在は上場廃止している日本企業も数多く存在します。例えば、キヤノン、富士フイルム、JAL、東京海上火災、NEC、日産、トヨタ、三井物産、キリン、ダイエー、イトーヨーカドー、ワコール、資生堂、丸紅、CSK、トレンドマイクロ、IIJ、ペッパーフードサービスなどです。

NASDAQとNYSEの比較

(1) NASDAQとNYSEとの違い

NYSEとは「New York Stock Exchange」(ニューヨーク証券取引所)の頭文字を取った略称であり、NASDAQと対になって取り上げられる世界最大の取引所です。NYSEは1817年に設立された世界で最も古い証券取引所の一つであり、主に歴史ある伝統的な優良企業が上場し、市場全体の時価総額もNASDAQを上回っています。一方、Nasdaqは新興企業向けの市場であり、産業分野でいうとハイテク企業やインターネット企業が多くを占めています。日本とは異なる状況としては、NYSEとNASDAQは熾烈な競争を行っており、IPO準備会社はお客様であり、現在はIPOにおいてはNASDAQがNYSEを圧倒しているという点についても知っておく必要があります。

(2) 企業はどちらの取引所を選ぶべきか

NASDAQに上場するのが良いか、NYSEに上場するのが良いかはそれぞれ上場要件や市場規模が異なっているため一概に言うことは難しいです。ただし、NASDAQが新興企業向けの市場であり、上場要件もそれに合わせた形でNYSEと比較するとハードルが相対的に低くなっているのを考えると、新興企業ならばNASDAQへの上場を検討するのが望ましいかもしれません。なお、かつてのNASDAQには、NYSE市場へ上場する前の踏み台というイメージはありましたが、現在はNYSEからNASDAQへのスイッチングも多くなっています。世界時価総額TOP5の企業のうち、4社がNASDAQに上場しているという状況にもあります。

NASDAQ上場のリスクと課題

(1) 上場企業が直面する潜在的なリスク

NASDAQ上場企業が直面する潜在的なリスクとして、以下の2つが考えられます。

  • 上場規制が厳しいため上場廃止になるリスク:NASDAQの上場規制は厳格であり、純資産や株価がある一定水準を下回ると上場維持が難しくなり、上場廃止の可能性が高まります。
  • 高い上場維持のコストを負担するリスク:NASDAQ上場企業は会計監査や内部統制監査、SECへの報告が要求されています。それらへ対応する手間や提携する証券会社や監査法人、弁護士法人に支払うコストが日本での上場する場合と比較して高くなり、上場維持のために高いコストを負担する可能性があります。

(2) それらのリスクを軽減する方法

上記のリスクを軽減する方法としては、NASDAQ上場サポートをおこなう外部のコンサルティング会社を利用することが考えられます。もちろん、利用しない場合と比較してコストはかかりますが、専門家のアドバイスを受けながら上場時や上場後の課題解決の助けになると言えます。

また、上場にあたっての証券会社や監査法人、弁護士法人と提携することになると思いますが、提携先の選定は慎重に行う必要があります。上場時だけでなく上場後も長い期間にわたって付き合うことになるため、適切な提携先を慎重に選ぶ必要があります。

NASDAQ上場の未来と可能性

(1) テクノロジーと市場の進化

NASDAQは、テクノロジーと市場の進化において中心的な役割を果たしてきました。テクノロジーの進化はNASDAQ上場企業にとって新たな機会を生み出し、市場全体の変化を牽引しています。以下に、テクノロジーと市場の進化に関するポイントを検討します。

  • デジタルトランスフォーメーション(DX):テクノロジーの急速な進化により、企業はデジタルトランスフォーメーションに焦点を当てています。これは、ビジネスプロセス、サービス提供、顧客エンゲージメントの変革を意味します。NASDAQはデジタル分野のリーダー企業の上場を支援し、テクノロジーの進化を反映しています。
  • クラウドコンピューティングとAI:NASDAQ上場企業の多くはクラウドコンピューティングと人工知能(AI)を活用して業績を向上させています。これらのテクノロジーは企業の効率性を高め、新たな市場を開拓するためのツールとして不可欠です。
  • フィンテック:フィンテックはNASDAQ上場企業の成長に大きな影響を与えています。ブロックチェーン技術を活用した新たな金融サービスやデジタル資産の増加は、テクノロジーと市場の進化を駆動しています。
  • グリーンテックと持続可能性:環境に優しいテクノロジー(グリーンテック)と持続可能なビジネスモデルは、NASDAQ上場企業によって推進されています。環境への配慮が市場価値と将来の成長に影響を与えており、NASDAQはこれらの企業を支援していくと考えます。

(2) NASDAQ上場の未来の可能性

NASDAQの未来にはさまざまな可能性が広がっています。NASDAQ上場企業と市場全体の将来の展望を考察します。

  • グローバル展開:NASDAQは世界中の企業にとって魅力的な上場先となりつつあり、国際市場での存在感が高まっています。将来的には、より多くの外国企業がNASDAQに上場し、国際的な投資家とのつながりが拡大するでしょう。
  • 新興産業の台頭:テクノロジー、ヘルスケア、クリーンエネルギーなどの新興産業は今後も成長が期待されています。NASDAQはこれらの分野での上場企業を増やし、市場の多様性を促進するでしょう。
  • SPACブーム:NASDAQはSPACのブームを受けて、新たな上場企業の道を開いています。このトレンドは今後も続き、新しいビジネスの機会を提供するでしょう。
  • テクノロジーの発展:NASDAQはテクノロジーを活用して市場の透明性と効率性を高めています。これにより、投資家と企業の取引がスムーズに行える環境が整備され、NASDAQの成長が続くでしょう。
  • 持続可能性への注力:環境への配慮が高まる中、NASDAQは環境に優しい企業やプロジェクトに焦点を当て、持続可能な未来を築くためのプラットフォームとして役立つでしょう。

NASDAQは変化と成長の途中にあり、未来の可能性はさらに広がっています。テクノロジー、市場の進化、新たな産業の興隆などがNASDAQの発展をけん引し、投資家と企業に新たな機会を提供し続けるでしょう。

まとめ

(1) NASDAQ上場の重要性

NASDAQは世界で2番目に大きな株式市場であり、その規模は世界中の投資家と企業に信頼をもたらしています。NASDAQに上場した企業は、広範な投資家層にアクセスでき、資本調達や成長の機会が大幅に増加します。この市場に上場することは、企業の知名度を向上させ、成長戦略の実行に必要な資金を調達する手段として非常に有益です。

また、NASDAQは高い流動性を持つ市場であり、株式の取引が盛んです。このことは投資家にとってもメリットで、株式を売買しやすくなり、価値の向上が期待できます。また、企業の株価は取引が盛んな市場でより正確に反映されるため、透明性が高まります。

NASDAQ上場企業は、アナリストやメディアからの注目を浴びやすく、評価や報道が多いです。これは企業の評判向上につながり、新たな機会や提携の可能性が広がります。

(2) 上場を目指す企業へのアドバイス

企業はNASDAQ市場に上場すると、期末日後4カ月以内に年次報告書(Form 20-F)の提出が求められます。また、必須ではありませんが、四半期報告書または中間報告書(Form 6-K)を提出することも考えられます。さらに、会社が一定以上の規模になると内部統制報告書の提出も必要になります。

このような上場後の継続開示があることを念頭に、上場前から決算開示体制や内部統制を整備しておくことが望ましいでしょう。NASDAQはオンライン文書のポータルであるListing Centerに追加資料やフォームなどを開示しています。米国弁護士と共に英語で米国のルールに向き合い上場準備していくことになるため、その課題をクリアしていくために社内外の優秀なメンバーの存在は不可欠です。

語学が堪能な協力者や役職員の存在に加え、日本で上場するよりも最低でも2倍以上の上場関連費用が必要となります。日本で主にオペレーションを行っている場合には、米国との時差についても考慮しておく必要があります。これらをふまえ、NASDAQ上場を目指すかについては総合的な検討が必要になることでしょう。

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