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新地 皓貴 Hiroki Shinchi

この記事の著者

新地 皓貴 Hiroki Shinchi

パートナー  / 公認会計士 , 税理士

国や業界が行う建設キャリアアップシステム(CCUS)の概要と取り組みとは

2023年12月1日

はじめに

今回は国や業界が一体となって理解や普及を行っている建設キャリアアップシステム(以下、CCUS)の動向について説明をしていきます。CCUSとは、技能者の就業履歴や保有資格などを一元管理する、業界統一のシステムです。技能者の処遇改善や技能研鑽、工事の品質向上、現場作業の効率化を図ることを目的としています。

以下、この制度の理解・普及に向けて行われている取り組みについて紹介します。

CCUSの登録者

2019年の運用が始まった時には、324万人いるといわれる建設技能労働者全員に対し、5年後までにCCUS発行のカードを普及させる目標が立てられていました。しかし、2022年1月末時点では81万人の登録にとどまっており、普及率は約25%となっています。

当初は「初年度で100万人の登録、5年後に全就労者」という目標に対して利用者は少ない状態になっています。これは、普及率の問題だけでなく、システムの利用料収入の面でも大きな課題です。国は各建設業界団体に対して追加拠出を求めていることなどからも、運営状況が厳しいことが分かります。しかし、これ以上の追加拠出は難しい側面があります。また、このまま利用者が伸び悩めば制度の存続が危ぶまれてしまいます。そのため、国と業界団体とが一丸となって制度の普及に努めています。

CCUS認定アドバイザー制度とは?

現在、普及に向けて進められているいくつかの制度について説明していきます。最初に説明するのはCCUS認定アドバイザー制度です。これは、CCUSの登録・現場運用等に係る専門的知識を修得し、CCUSの利用者に対する適切な指導及び助言等を行うことができ得ると建設業振興基金により認められた総合アドバイザーです。建設業界に従事する方はもちろんですが、行政書士の方も多くの認定を受けています。

また、CCUS認定アドバイザーとして認められるには、一定の要件があります。建設業振興基金が実施する講義と課題を完了させ、修了考査で75点/100点を取得するという要件です。

認定を受けると、技能者登録や事業者登録や現場登録などを支援できます。CCUS認定アドバイザーの名簿は建設業振興基金のホームページに記載されており、指導や助言を求めることができます。

建設業退職金共済の電子申請について

建退共とは建設業退職金共済の略称です。共済契約者となった事業主が被共済者である労働者の働いた日数に応じて掛金を納付します。それにより、被共済者である労働者が建設業界の中で働くことをやめたときに、共済から退職金が支払われる仕組みになっています。

事業主が掛金を納付する際、証紙貼付方式が採用されていました。2021年3月より電子申請方式の受付が開始され併用できるようになり、2023年度には電子申請方式に完全移行しました。

電子申請の方法を簡単に説明すると以下のような流れになります。

  1. CCUSの就業履歴情報を下請業者がCCUSと連携している就労実績ツールで読み込む
  2. そのデータをメール等で元請業者に提出する
  3. 元請業者は就労実績報告書を作成し、建退共に電子申請する

Quoted-from-the-website-of-the-Ministry-of-Land-Infrastructure-Transport-and-Tourism

(引用:国土交通省HPより)

CCUSでは作業現場にカードリーダーを設置し、カードリーダーに技能者カードをタッチすることで就業履歴を蓄積することを想定しています。しかし、実際には小さい工事現場ではカードリーダーを設置することが難しい場合もあります。そのような現場の場合、電子申請で建退共に就業履歴の登録を行なうことで、CCUSの就業履歴を蓄積することも可能になります。

おわりに

建設業は、技能者がさまざまな現場を渡り歩いてキャリアを形成していくという特殊な業界です。資格を除き経験や技能の証明について、業界共通で認識できる手段が今まではありませんでした。そのため、建設業界全体の待遇改善やキャリアプランの見える化を行うことで、減少が続く建築業界の担い手の維持と増加を目指すことがCCUSの大きな目的です。

その一方で、今までは無かったシステムの業界全体での導入を行ったことで費用がかさんだためか、2020年10月にも利用料の値上げが行われています。新規登録が鈍くなった理由の一つとして、利用料金も挙げられるでしょう。

現状課題が目に付きやすく、成果やメリットが実感しづらい状況では、コストがかかるばかりに思われるかもしれません。

しかし、2023年度には公共工事においてCCUSを原則化しています。国としても一層の普及を目指し検討を続けていくことでしょう。登録の時期は企業によって異なるでしょうが、目を離さずに情報を追うことをお勧めします。

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