ホーム/コラム/会計・税務/【国内税務Q&A​】被合併法人の繰越欠損金の引継の可否​
シェア
藤井 淳平 Jumpei Fujii

この記事の著者

藤井 淳平 Jumpei Fujii

シニアマネージャー  / 税理士

【国内税務Q&A​】被合併法人の繰越欠損金の引継の可否​

2024年7月11日

質問

A社は、資本関係のないB社の株式をすべて取得し(完全支配関係)、その3ヶ月後にB社を被合併法人とする吸収合併(無対価合併)を行いました。この場合、B社の繰越欠損金をA社にて引き継ぐことは可能でしょうか。

【前提条件】

A社:

  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:医薬品開発

B社:

  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:医薬品開発
  • 繰越欠損金:10億円
  • 完全支配関係発生後にB社の代表取締役は退任し、A社の代表取締役がB社の代表取締役に就任

回答

本合併は適格合併に該当し、且つみなし共同事業要件を満たすことから、B社の繰越欠損金をA社に引き継ぐことが可能と判断できます。

重要用語

質問及び回答にて言及されている「合併」「無対価合併」「適格合併」「完全支配関係」「みなし共同事業要件」という用語・条件は、組織再編税制において重要な概念であるため、ここで簡単に確認したいと思います。

合併

2以上の法人が、契約により1つの法人になることをいいます。合併により、被合併法人の権利義務のすべてが合併法人に包括承継されます。

無対価合併

被合併法人の株主に対して、合併法人株式や現金などの対価が一切交付されない形態の合併をいいます。

適格合併

一定の要件(税制適格要件)を満たす合併であり、被合併法人の資産及び負債を合併法人に簿価で引き継ぐことが可能となります。税制適格要件は、合併法人と被合併法人の合併直前の資本関係等に応じて異なります。

完全支配関係

一の者(法人・個人)が、法人の発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係をいいます。例えば、親会社が子会社のすべての株式を保有することで、子会社を完全に支配している状態がこれに該当します。完全支配関係がある場合の税制適格要件は、以下の2点となります。

1.金銭等不交付要件

合併の対価として合併法人株式又は 合併親法人株式のうち、いずれか一つの株式以外の資産の交付がないこと(無対価合併も含まれる)をいいます。

2.完全支配関係継続要件

合併後も完全支配関係が継続 することを要件とします。親会社が子会社を吸収合併する等の場合には、合併により一つの法人となりますので、合併後の完全支配関係の継続は求められません。

みなし共同事業要件

支配関係がある場合の適格合併で、合併後に被合併法人の繰越欠損金を合併法人が引き継ぐことができるか否かを判定するための基準の一つです。具体的には、以下の要件が あります。

①事業関連性要件

合併前の両法人の主要な事業が相互に関連するものであること。

②事業規模要件

合併前の両法人の事業規模が極端に異ならないこと。具体的には、売上金額、従業者の数、資本金の額又はこれらに準ずるものの規模の割合が、おおむね5倍を超えないこと。

③事業規模継続要件

両法人の主要な事業が支配関係発生時から合併の直前まで継続して営まれており、且つ支配関係発生時と適格合併の直前におけるそれぞれの事業の規模の割合が、おおむね2倍を超えないこと。

④特定役員引継要件

被合併法人及び合併法人の合併前の特定役員が、合併後も引き続き特定役員として在任することが見込まれること。上記②、③を満たさない場合に必要となる要件。

根拠(質問に関する判断)

1. 合併の適格判定

本合併前において、A社は、B社の発行済株式の全部を保有していることから、合併法人であるA社と被合併法人であるB社との間にはA社による完全支配関係があるものといえます。また、本合併は無対価合併であり、合併前にA社がB社の発行済株式の全部を保有する関係であることから、完全支配関係がある場合の税制適格要件を満たし、「適格合併」に該当することとなります。

2. 繰越欠損金の引継制限の判定

内国法人を合併法人とする適格合併が行われた場合には、原則として、被合併法人の未処理欠損金額は合併法人に引き継がれることとされています(法人税法57条2項)。

一方で、繰越欠損金を多く有する法人を買収した後に適格合併を行うことにより、当該繰越欠損金を不当に利用し、節税を行うといった租税回避行為が考えられます。これに対応するため、被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことに対する一定の制限が設けられています(法人税法57条3項)。

具体的には、次のイからハのいずれにも該当しない場合、合併法人は被合併法人の未処理欠損金額について引継制限を受けることとなります(法人税法施行令112条3項、4項)。

  • 当該適格合併がみなし共同事業要件を満たす場合(法人税法施行令112条3項)。
  • 被合併法人と合併法人との間に、当該合併法人の適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日から継続して支配関係がある場合(法人税法施行令112条4項一)。
  • 被合併法人又は合併法人が当該5年前の日後に設立された法人である場合であって、当該被合併法人と当該合併法人との間に当該被合併法人の設立の日又は当該合併法人の設立の日のいずれか遅い日から継続して支配関係があるとき(法人税法施行令112条4項二)。

本件において、合併法人であるA社と被合併法人であるB社との間の資本関係は合併の3ヶ月前に生じており、ロとハのいずれにも該当しません。よって、以下では、本適格合併がイの「みなし共同事業要件」を満たすかについて検討します。

①事業関連性要件

A社とB社の主要な事業は同じ医薬品開発業であるため、事業関連性要件を満たします。

②事業規模要件

A社とB社の資本金はそれぞれ1,000万円であり、規模の割合が5倍を超えないため、事業規模要件を満たします。

③事業規模継続要件

B社は資本関係が発生した3ヶ月前から適格合併直前まで事業を継続しており、資本金の額も変わっておらず、また、A社も資本関係が発生した3ヶ月前から適格合併直前まで事業を継続しており、資本金の額も変わっていないため、事業規模継続要件を満たします。

④特定役員引継要件

上記②、③の要件を満たしているため検討不要ですが、B社の適格合併の前における特定役員である者は、合併後も特定役員にあることは見込まれることから、特定役員引継要件も満たしています。なお、B社の代表取締役が退任したのは、完全支配関係発生時であり、④特定役員引継要件には影響がありません。

以上より、本適格合併は、①事業関連性要件、②事業規模要件、③規模継続要件の3つを満たし、「みなし共同事業要件」を満たしているといえます。よって、合併法人であるA社は、被合併法人であるB社の繰越欠損金を引き継ぐことが可能と判断できます。

国内税務Q&A_被合併法人の繰越欠損金の引継の可否

ダウンロード

お問い合わせ