令和7年税制改正大綱のポイント-変更される特例措置の適用時期限や適用要件、防衛特別法人税やリース会計基準関連、適用時期について-
2025年5月19日
はじめに
令和7年度の税制改正大綱では、いわゆる「年収103万円の壁」、退職所得に関する課税の見直し、高校生などの扶養控除の見直しといった、私たちの生活に深くかかわる部分が注目を集めました。一方で、法人税法や消費税法については、目立った改正項目は見られませんでした。
本コラムでは、その中でも押さえておきたい法人課税と資産課税の改正点に焦点を当ててご紹介します。
中小法人等に対する軽減税率の延長
中小法人の法人税は基本税率23.2%ですが、特例措置により、800万円までの所得については軽減税率15%でした。以下の見直しを追加した上で、この措置が2年間延長されます。これはリーマンショック時に始まった時限措置でしたが、賃上げや物価高などの状況を踏まえて延長が決定されました。
- 所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額の内、年800万円以下の金額に適用される税率が15%から17%へ引き上げ
- グループ通算制度の適用をしている法人は特例の適用除外
防衛特別法人税
日本の防衛力を強化する目的で、たばこ税が増税されますが、それに加えて新たに創設される法人税が「防衛特別法人税月1日以後に開始する事業年度からになっており、次のような計算で税額を求めます。
{(基準法人税額※1-500万円)×4%}-税額控除※2= 防衛特別法人税額
※1 基準法人税額…以下の制度適用前の法人税額
- 所得税額の控除
- 外国税額の控除
- 分配時調整外国税相当額の控除
- 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除
- 戦略分野国内生産促進税制のうち特定産業競争力基盤強化商品に係る措置の税額控除及び同措置に係る通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額の加算
- 控除対象所得税額等相当額の控除
※2 以下の税額控除
- 外国税額の控除
- 分配時調整外国税相当額の控除
- 控除対象所得税額等相当額の控除
- 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の控除
リース会計基準に関する税制
令和6年9月13日に「リース取引に関する会計基準」等(以下、「新リース会計基準」)が公表されたことで、以下の表のように処理方法が変更されます。これは2027年4月以降開始の事業年度より適用予定です。
改正前 | 改正後 | |||
---|---|---|---|---|
財務会計 | 税務会計 | 財務会計 | 税務会計 | |
ファイナンス・リース | オンバランス処理(資産負債計上あり) | 売買処理(資産負債計上あり) | オンバランス処理(資産負債計上あり) | 売買処理(資産負債計上あり) |
オペレーティング・リース | オフバランス処理(資産負債計上なし) | 賃貸借処理(資産負債計上なし) | オンバランス処理(資産負債計上あり) | 賃貸借処理(資産負債計上なし) |
この変更ではオペレーティング・リースでのみ財務会計上処理が変更されます。これにより法人税法上の金額と差異が生まれることになり(赤字)、税務調整が必要になります。
事業承継税制に関する特例措置
この税制の適用期限は個人版が令和10年12月末、法人版(特例措置)が令和9年12月末となっています。それぞれの適用期間が到来するまでの間 、より円滑な事業承継を促すために役員就任要件が次のように緩和されました。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
個人版 | 贈与の日まで引き続き3年以上特定事業用資産に係る事業に従事していること | 贈与の直前において特定事業用資産に係る事業に従事していること |
法人版 (特例措置) | 贈与の日まで引き続き3年以上特例認定贈与承継会社の役員等であること | 贈与の直前において特例認定贈与承継会社の役員等であること |
結婚・子育て資金の一括贈与の贈与税非課税措置の延長
少子化の要因の1つである経済的要因の軽減を目的として、父母・祖父母など直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けるときの贈与税について、非課税措置が設けられていましたが、その適用期限が2年間延長されることになりました。
(改正前)令和7年3月31日まで→(改正後)令和9年3月31日まで
おわりに
本コラムでは、令和7年度税制改正大綱のうち法人課税と資産課税に関する主なポイントをご紹介しました。法人課税では、「防衛特別法人税」が創設されましたが、それ以外には資産課税とともに大規模な制度改正は見られず、企業の業績や業務に大きな影響を及ぼすものは限定的とみられます。なお、「防衛特別法人税」は令和8年4月1日以降に開始する事業年度から適用予定のため、早い段階で必要な対応を検討し準備を進めていきましょう。