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景井 俊丞 Shunsuke Kagei

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景井 俊丞 Shunsuke Kagei

パートナー  / 申請取次行政書士

「経営・管理」在留資格に係る審査基準および提出書類に関する制度改正案の概要(厳格化)について

2025年9月1日

はじめに

2025年8月26日、「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令等の一部を改正する省令案」について意見公募手続き(パブリックコメント)が実施されました。

新聞記事やオンライン記事などの先行報道では、「経営・管理」に関する資本金に係る基準が500万円から3,000万円に変更になり、かつ常勤の従業員1名以上の雇用が求められるなど「経営・管理」が厳格化されるとありましたが、この公表された改正案をみるとさらに厳しい基準を設けることとなっております。

現在のところパブリックコメントの段階ですが、施行予定日が2025年10月中旬となっており、期限が迫っております。今回は公表された改正案の内容の詳細を紹介したいと思います。

基準省令の改正について

「経営・管理」の基準を定めた出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令を次のとおり改正するとしています。

1.申請する事業の規模について

【現在】

以下のいずれかに該当すること。

  • ア その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する2人以上の常勤の職員が従事して営まれるものであること。
  • イ 資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること。
  • ウ ア又はイに準ずる規模であると認められるものであること。

【改正後】

以下のいずれにも該当すること。

  • ア 常勤の職員の数について1人以 上従事すること
  • イ 資本金の額又は出資の総額が3,000万円以上であること

従来の資本金等の額が500万円から3,000万円に引き上げられるだけでなく、常勤の職員1名以上の雇用が求められることとなりました。

2.経営に従事する者の学歴又は職歴に関する基準の創設

  • ア 経営管理に関する分野又は申請に係る事業の業務に必要な技術又は知識に係る分野において博士の学位、修士の学位又は専門職学位を有していること。
  • イ (申請人が事業の経営に従事しようとする場合においても、)事業の経営又は管理について3年以上の経験(特定活動の在留資格(出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件で定める活動のうち本邦において貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為を行う活動を含む活動を指定されたものに限る。)をもって本邦に在留していた期間がある場合には、当該期間を含む。)を有してい ること。

従来から「経営・管理」の管理業務に従事する者には実務経験が求められており代表取締役、取締役などの経営の業務に従事する者には学歴および実務経験は求められておりませんでした。しかし今回の改正では経営の業務に従事する者には学歴または実務経験を求めることとなっております。

提出書類の改正について

提出書類も以下のように改正するとしております。

1.事業計画書に専門家の評価が必要になる

在留資格認定証明書交付申請時及び在留資格変更申請等、「経営・管理」を取得する際の事業計画書について、経営に関する専門的な知識を有する者による評価を受けたものを提出しなければならないことを定めるとされております。専門的な知識を有する者が具体的にどのような人物をさすかまだ確認できておりませんが公認会計士や中小企業診断士などが想定されます。なお、現行では事業計画書の提出が必要とされているのはカテゴリー3とカテゴリー4の会社となっております。

2.事業の規模に係る提出資料について

【現在】

以下のいずれかを提出する。

  • ア 当該外国人を除く常勤の職員の総数を明らかにする資料並びにその数が二人以上である場合には、当該二人の職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票、在留カード又は特別永住者証明書の写し
  • イ 資本金の額又は出資の総額を明らかにする資料
  • ウ その他事業の規模を明らかにする資料

【改正後】

以下のいずれも提出する。

  • ア 当該外国人を除く常勤の職員の総数を明らかにする資料並びに当該職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票、在留カ ード又は特別永住者証明書の写し
  • イ 資本金の額又は出資の総額を明らかにする資料
    ウ 学歴または職歴を証する文書の提出

改正後は事業の経営または管理に従事するいずれの場合にも学位を有することを証する文書または職歴その他の経歴を証する文書を提出しなければなりません。

3.在留期間更新許可申請時について

事業の規模に係る提出資料について以下のように改正されました。

【現在】

以下のいずれかを提出する。

  • ア 当該外国人を除く常勤の職員の総数を明らかにする資料並びにその数が二人以上である場合には、当該二人の職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票、在留カード又は特別永住者証明書の写し
  • イ 資本金の額又は出資の総額を明らかにする資料
  • ウ その他事業の規模を明らかにする資料

【改正後】

以下のいずれも提出する。

  • ア 当該外国人を除く常勤の職員の総数を明らかにする資料並びに当該職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票、在留カ ード又は特別永住者証明書の写し
  • イ 資本金の額又は出資の総額を明らかにする資料

結び

今回の改正案により「経営・管理」の基準が非常に厳格化される見通しとなりました。すでに旧基準で許可を受けた方の今後の更新許可申請等についてはまだ発表はありません。

新しく日本で会社を設立して「経営・管理」の在留資格を取得するには法人設立には司法書士、在留資格の取得は行政書士、事業計画書の評価は公認会計士や中小企業診断士等といった専門家の協力が今後ますます必要になります。弊社はこれら一連のサービスをワンストップで提供できる体制を整えております。何かご質問やご依頼があれば是非ご連絡いただければ幸いです。

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