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池田 孝太 Kota Ikeda

この記事の著者

池田 孝太 Kota Ikeda

コンサルタント  / 申請取次行政書士

会社設立前から節税対策で準備することと留意点とは

2023年5月4日

会社を設立する前に、節税対策で準備すること、気をつけることとは何でしょうか。それは、「資本金額」「事業年度」「創立費・開業費」の3つです。本記事では、会社設立前の節税対策について詳しくご紹介いたします。

弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

資本金額について

会社を設立する際には、資本金の額を決定しなければなりませんが、節税の観点から資本金の額は重要な要素となります。具体的には、「資本金1,000万円未満」にするのか、あるいは「資本金1,000万円以上1億円以下」にするのかによって、節税の効果が違ってきます。

(1)資本金1,000万円未満の場合

会社を設立する際に、資本金を1,000万円以上にした場合、会社設立の初年度と2年目は消費税の課税事業者となってしまいます。もし設立初年度から消費税の納税が見込まれるような事業計画であれば、設立後2年(2期)は免税事業者となるように、資本金1,000万円未満で会社を設立する方が、消費税を免除されることになります。

(2)資本金1,000万円以上1億円以下の場合

日本では、資本金が1億円以下の会社であれば、以下のような税務上の優遇を受けることができます。

① 年800万円以下の所得に対して、軽減税率(15%)を適用できる。
② 年800万円以下の交際費は、全額損金算入(経費に計上)できる。
③ 青色申告書を提出する中小企業等は、欠損金の繰戻還付ができる(前年度に繰り戻して、法人税の還付請求ができる)。
④ 30万円未満の少額減価償却資産を全額損金算入できる(一事業年度300万円が上限)。
⑤ 法人事業税の外形標準課税(事業規模に応じた課税制度)の対象外になる。
⑥ 留保金課税(内部留保金に対して行われる追加課税)の適用対象から除外される。
⑦ 各種特別償却や特別控除を適用できる。
⑧ 貸倒引当金(将来の貸倒に対して備える引当金)の法定繰入率を適用できる。
※ただし親会社の資本金が5億円以上であり、日本法人がその完全子会社である場合には、①、②、③、⑥、⑧は適用されません(グループ法人税制)。

なお、資本金が1,000万円以下と1,000万円超では法人住民税の均等割の金額が変わってきます。例えば東京都では、資本金が1,000万円以下の場合の均等割の金額は年間7万円ですが、資本金が1,000万円を1円でも超えてしまうと均等割の金額は年間14万円となってしまいます。

事業年度について

会社を設立する際に、事業年度をいつにするのか検討する必要があります。一般的な会社は、国や地方自治体の会計年度に合わせて、「4月1日~翌年3月31日」を事業年度にしていますが、個別の事情により、「1月1日~12月31日」など、自由に設定することができます。

この事業年度の設定は、消費税を節税する観点から重要です。前述のとおり、資本金を1,000万円未満で会社を設立した場合には、設立の初年度と2年目は消費税の免税事業者となりますが、設立2年目には「特定期間」における課税売上高が1,000万円を超えた場合には課税事業者となり、消費税を納める義務が生じます。特定期間とは、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間を言います。

例えば、事業年度を「4月1日~翌年3月31日」とした資本金1,000万円未満の会社が、令和2年6月1日に設立した場合を考えてみます。

前述のように、初年度(令和2年度)と2年目である令和3年度は、消費税の免税事業者となります。しかし、令和3年度については、前事業年度開始の日以降6ヶ月間、つまり「令和2年6月1日~11月30日」の間が特定期間となり、この期間に課税売上高が1,000万円を超えた場合には、2年目から課税事業者となるのです。但し、課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の金額によって、判定することもできます。

なお、「短期事業年度」という特例があり、これに該当すれば、特定期間とならず、2年目も原則どおり、免税事業者となります。

短期事業年度とは、次のいずれかに該当する前事業年度をいいます。
①前事業年度が7ヶ月以下である場合
②前事業年度が7ヶ月を超え8ヶ月未満の場合であって、前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間の末日の翌日から前事業年度終了の日までの期間が2ヶ月未満の場合

短期事業年度となる前事業年度は、特定期間に該当しないため、仮に初年度の6か月間に課税売上高が1000万円以上あっても、例えば1期目が7ヶ月間、2期目が12ヶ月間であれば、最大19ヶ月間が消費税の免税期間となります。

このように、会社を設立する際には、初年度の課税売上高と共に、特定期間がどれくらいになるかを考えて事業年度を設定しないと、設立2年目から消費税の課税事業者になってしまうのです。

創立費・開業費について

会社の設立に係る創立費や、会社の開業準備に係る開業費は、繰延資産として資産に計上し、その後任意に償却できる(経費として計上できる)項目となっています。創立費や開業費を一度に経費として計上してしまうと、会社の設立1年目から大きな赤字となり、経営を圧迫することになります。

そこで、支出効果が1年以上にも及ぶ創立費や開業費については、複数年に渡って、経費として計上することになるのです。但し、創立費、開業費ともに、5年以内に償却しなければなりません。

創立費とは、会社の設立前に会社が負担することとなる設立のための費用です。例えば、定款や諸規程を作成するための費用、株式を募集するための費用、株式申込書や株券の印刷費用、金融機関の取扱手数料、創立総会の費用、法人設立登記費用などが、創設費に該当します。

開業費とは、法人を設立した後、事業をスタートするまでにかかった開業準備のための費用です。例えば、事務所の家賃、従業員の給与、広告宣伝費、消耗品費など、いろいろな経費が、開業費に該当します。

創立費や開業費は会社設立前や事業開始前に生じる費用ですが、これらの費用は設立した法人の損金となる項目です。したがって、必ず領収書等の証憑(取引があったこを証明する書類)を入手・保存して、経費計上することで節税が図れます。

おわりに

本記事では、会社設立前の段階で検討しておくべき節税対策について紹介しました。会社設立前の節税対策は非常に見逃しやすく、後で後悔する会社設立者も多くいます。ぜひ早め早めに検討し、最善の策をとっておきましょう。

もし会社設立前の節税対策でお困りのことがありましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。実績豊富なスタッフが丁寧にサポートいたします。

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