RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年1月号
2024年1月10日
2024年度税制改正大綱・対応が必要となる法改正・外国人留学生の新卒採用手続き
あけましておめでとうございます。RSM汐留パートナーズです。昨年は格別のご厚情を賜り、厚くお礼申し上げます。本年も変わらぬご支援を賜れますよう、弊社一同一層精進をしてまいります。
さて、今年最初のニュースレターでは、税務より「2024年度税制改正大綱」、労務より「対応が必要となる法改正」、行政書士法人より「外国人留学生の新卒採用手続き」について取り上げます。
毎年のトピックとなる税制改正大綱においては、新たに「戦略分野投資促進税制」と「イノベーションボックス税制」が創設されました。いずれも特定の領域への投資や開発を後押しする税制で、日本の競争力に関わる項目への支援が行われる格好です。昨年度までの税制改正から継続のものと合わせ、2か月に分けてお伝えいたします。社会保険労務士法人、行政書士法人で取り上げる論点についても、関係する企業様は少なくないかと思いますので、是非本ニュースレターをご活用ください。
改めまして、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
はじめに
2023年12月14日、2024年度税制改正大綱が公表されました。今回から2回に渡り、その中で注目度が高い論点を取り上げます。今回は法人に関わる注目論点を見ていきます。
賃上げ促進税制の強化
① 大企業
原則の税額控除率を15%から10%に引き下げる一方、継続雇用者給与等支給額の増加割合に応じた税額控除率を最大30%から35%に拡大し、教育訓練費に係る上乗せ要件の緩和や女性活躍・子育て支援に係る上乗せ措置が追加されます。また、青色申告法人で常時使用従業員数2,000人以下の法人を中堅企業と位置づけ、より高い控除率を設定し、マルチステークホルダー方針の公表に係る提出義務者の範囲等が見直されます。適用期限は3年延長されます。
② 中小企業
給与等支給額の増加割合に応じた税額控除の上乗せ要件等については変更はないものの、教育訓練費に係る上乗せ要件緩和や女性活躍・子育て支援に係る上乗せ措置が追加され、最大控除率が40%から45%に引き上げられます。また控除限度超過額は5年間繰越しが可能となります。適用期限は3年延長されます。
戦略分野投資促進税制の創設
国として戦略的な長期投資が不可欠となる分野(電気自動車(蓄電池)、半導体、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAF)に対して、生産・販売量に応じて減税を行う戦略分野国内生産促進税制が創設されます。青色申告法人で、改正産業競争力強化法の施行日から2027年3月31日までに産業競争力強化法の認定を受けた認定事業適応事業者が、産業競争力基盤強化商品の生産設備の新設等を行った場合に、認定日以後10年以内の日を含む各事業年度において、販売されたものの数量等に応じた金額と産業競争力基盤強化商品生産用資産の取得価額を基礎とした金額のいずれか少ない金額の税額控除ができます。控除上限は、DX投資促進税制・カーボンニュートラル投資促進税制の税額控除との合計額で、法人税額の40%(半導体は20%)とし、控除限度超過額は4年間(半導体は3年間)繰越可能となります。
イノベーションボックス税制の創設
青色申告法人が、国内で自ら研究開発を行った特許権やAI分野のソフトウェアに係る著作権について、2025年4月1日から2032年3月31日の間に行った特許権譲渡等取引に係る所得(当該所得に一定割合を乗じた金額と当期所得金額のいずれか少ない金額)の30%を損金算入できることとなります。
外形標準課税の対象法人の見直し
① 減資への対応
前事業年度に外形標準課税対象法人であり、当事業年度に資本金1億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合には、外形標準課税の対象とされます。適用時期は2025年4月1日以後開始する事業年度からとなります。
② 100%子法人等への対応
資本金と資本剰余金の合計額が50億円超の法人等の100%子法人等のうち、資本金1億円以下であっても、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超える法人は、外形標準課税の対象とされます。適用時期は2026年4月1日以後開始する事業年度からとなります。
おわりに
法人に関わる注目論点としては、その他、交際費の損金不算入制度の適用除外措置の拡充、中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充等も挙げられます。今回個別に取り上げなかった論点を含め、ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。
令和6年に対応が必要となる法改正について
令和6年には法改正により新たな対応が必要になるものや、これまでの対応を見直さなければならないものがあります。今回は令和6年に予定されている主な法改正についてご案内します。
法改正のスケジュール
今年予定されている主な法改正は以下の通りです。
時期 | 内容 |
---|---|
令和6年4月 | 労働条件明示のルール変更 |
裁量労働制に関する法改正 | |
時間外労働の上限規制の適用猶予終了 (建設業・物流業・医師等) | |
令和6年10月 | 短時間労働者に対する社会保険の適用拡大 (被保険者数51人以上の企業等) |
労働条件明示のルール変更
法律により明示が義務付けられている労働条件について改正があります。令和6年4月1日からは法改正に対応した労働条件通知書や雇用契約書を用いる必要がありますので、3月までに準備をしておきましょう。
詳細については、下記ページをご覧ください。
2024年4月から労働条件明示のルールが変わります ー 厚生労働省|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
時間外労働の上限規制の適用猶予終了
働き方改革の一環として、労働基準法に時間外労働の上限が規定されました。平成31年4月から適用されていましたが、一部の事業・業務については、適用が5年間猶予されていました。令和6年4月からは適用猶予が終了し、他の企業と同様の規制が適用されることになります。適用が猶予されていた事業・業務については以下の通りです。
- 工作物の建設の事業
- 自転車運転の業務
- 医業に従事する医師
- 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業
短時間労働者に対する社会保険の適用拡大
現在、社会保険の被保険者数が101人以上の企業等については、週20時間以上働く短時間労働者についても社会保険の加入対象となっています。令和6年10月からは被保険者数が51人以上の企業等にまで適用が拡大されますので、該当する場合には対応が必要となります。なお、被保険者数が51人以上の企業等というのは、「1年のうち6月以上、適用事業の被保険者の総数(適用拡大により加入対象となる短時間労働者は含まない)が51以上になることが見込まれる企業等のことをいいます。
加入対象となる短時間労働者の要件は以下の通りです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
詳細については、下記ページをご覧ください。
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
はじめに
今年、初めて外国人留学生の4月の新卒採用を決定した、もしくは検討している企業様の中には入管手続きについてお困りの方も多いのではないでしょうか。今回は外国人留学生の新卒採用に係る入管手続きについてご案内いたします。
在留資格変更許可申請を行う
現在、外国人留学生が保有している「留学」という在留資格から就労のための在留資格に変更する必要があります。この申請をするためには現在所属している大学等から卒業見込証明書を発行してもらい、管轄の出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請の添付書類として提出する必要があります。卒業見込証明書が発行されればいつでも申請が可能かというとそうでもなく、各出入国在留管理局へ新卒採用の申請がいつから可能かを確認することをおすすめいたします。
審査から新しい在留カード受領のながれ
例えば1月に在留資格許可申請をし、管轄の出入国在留管理局から許可の通知がきても、すぐに就労の在留カードを受領できるわけではありません。在留カードの受領には卒業証書や卒業証明書の提示が求められます。ほとんどの方が3月に卒業証書や卒業証明書が必要なため、3月末に手続きをする人がほとんでではないでしょうか。そのため、私が主に利用している東京出入国在留管理局の許可受領(Aカウンター)は非常にこの時期混みあいます。
その他注意事項
まず出入国在留管理局から無事に許可を頂いたら、就労開始日までに就労に係る在留カードを受領してください。「留学」の在留資格のまま就労を開始してしまうと資格外活動になり得ます。1月から3月にかけて母国に帰国する外国人留学生もいらっしゃいますが、中には就労開始日である4月1日ギリギリに帰国してついつい、あたらしい在留カードの受領を怠ってしまう人もいるかと思います。また先にも記載したようにこの時期の東京出入国在留管理局は大変混みあいますので、時間の余裕をもってスケジュールすることをおすすめいたします。
就労への在留資格変更許可申請中に管轄の出入国在留管理局から追加資料として住民税の課税証明書と納税証明書を求められるケースもあります。そんな時は外国人留学生のアルバイトの時間超過を疑われているのかもしれません。外国人留学生が資格外活動許可を取得してアルバイトする場合、週28時間以内という原則がありますので外国人留学生、採用企業共に注意が必要です。
弊社のイミグレーションサービス
弊社では前述にないような注意事項についてもきめ細かくアドバイスさせていただいた上で、申請に関する業務を受託しております。オンラインシステムに登録しておりますので、全国どこの地方出入国在留管理局にたいしても申請可能です。
はじめて外国人を採用される企業様は不安でいっぱいかと存じます。どのような些細な事でも構いません。是非一度弊社にご相談いただければ幸いです。