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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年5月号

2024年5月8日

インボイス制度Q&Aの改定論点・テレワークにおける労務管理・投資に係る在留資格

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「インボイス制度Q&Aの改定論点」、労務より「テレワークにおける労務管理」、行政書士法人より「投資に係る在留資格」について取り上げます。

労務より取り上げる「テレワークにおける労務管理」については、テレワーク下における長時間労働を要因とする労災認定によって注目が集まっている論点です。これは、従業員が発症した精神疾患の原因がテレワークによる長時間労働であると認められたものです。新型コロナウイルス感染症にかかる「まん延防止等重点措置」の解除以来、実施率が減少傾向にあるとされるテレワークについて、労働時間の管理は勿論、コミュニケーションや人事評価など、注意すべき点があるモノですので、今月のニュースレターをご確認頂き、自社の見直しにお役立てください。

 

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はじめに

国税庁は2024年4月8日にインボイス制度に係る「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」を改訂しました。当改訂では「お問合せの多いご質問」の内容や、2024年度税制改正内容を反映しています。今回は改訂部分の中で比較的論点になりやすいと思われる部分を厳選して見てみます。その他論点についても、適宜、インボイス制度に関するQ&Aをご参照下さい。

選定した個別論点の概要(番号はQ&A番号)

No.8-2:課税期間の中途から課税事業者となった場合の基準期間における課税売上高
課税売上高は、基準期間における課税対象となる売上高の合計額となり、免税事業者であった期間の課税売上高も含めて計算(その部分は税抜処理しない)。

No.66:複数の契約に係る適格請求書の交付の可否
適格請求書に記載する消費税額等は、税率ごとに合計した課税対象となる取引額に、所定の割合を乗じて算出し、端数は一の適格請求書につき、税率毎に1回だけ処理。

No.103:高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法
利用証明書のダウンロードは不要で、クレジットカード利用明細書の保存のみで仕入税額控除を適用可能。

No.103-3:電気通信利用役務の提供と適格請求書の保存
国外事業者が提供する事業者向け電気通信利用役務について、国内事業者はリバースチャージ方式により消費税を申告納税し、適格請求書の保存は不要。一方、消費者向け電気通信利用役務では適格請求書の保存が必要(一定規模以下の事業者の少額特例あり)。

No.107-2:実費精算の出張旅費等
出張旅費や宿泊費など、社員に支給される経費で、通常必要と認められる部分は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能(概算払、実費精算を含み、通常必要と認められる部分は所得税の非課税範囲内で評価)。

No.110:帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項
帳簿への「住所又は所在地」の記載は不要。

No.110-2:自動販売機特例又は回収特例における3万円未満の判定単位
住所記載不要の対象となる取引(3万円未満)の判定単位について、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定。

No.106:古物商等の古物の買取り等
免税購入品であることを知りながら行った課税仕入れについては、古物商等特例の有無に関わらず、仕入税額控除制度の適用不可。

No.115:2割特例の適用ができない課税期間
PEを有しない国外事業者や一般課税で金又は白金の地金等を200万円以上仕入れた事業者に対して2割特例の適用を制限。

おわりに

インボイス制度に関するQ&Aは、全130問の膨大な構成となっていますが、これは実務上の迷いや問い合わせが多いことを示唆していると思います。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

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テレワークにおける労務管理

2024年3月8日付の報道によれば、テレワークによる長時間労働が原因となり、精神疾患を発症した従業員が労災認定されました。この労災認定は極めて異例であり、テレワーク環境下での労務管理の重要性を再度浮き彫りにしました。本記事では、この事例を踏まえ、テレワークにおける労務管理のポイントや課題、そして効果的な対策について解説していきます。テレワークによる長時間労働に伴うリスクを軽減し、従業員の健康と生産性を両立させるための方法を探ります。

1.労災認定の概要

外資系補聴器メーカーの日本法人で働く50代の女性社員が2022年3月、テレワーク中に月100時間を超える残業を行い、適応障害を発症。横浜北労働基準監督署により労災認定されました。

女性社員は、2019年に入社し、2020年以降はテレワークで業務を行っていました。上司からの細かい指示や深夜の業務依頼により、労働時間が増加。所定労働時間内にも多くの指示があり、休日や深夜にも仕事をこなすことが常態化しました。女性社員は会社に改善を求めましたが実現せず、適応障害を発症し休職に至った、という事例です。

2.事業場外みなし労働時間制の適用

女性は事業場外みなし労働時間制の適用を受けていました。事業場外みなし労働時間制とは、「使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については特定の時間を労働したとみなすことのできる制度」です(厚生労働省 jigyougairoudou.pdf (mhlw.go.jp))。

厚生労働省では「テレワークガイドライン」を示しており、(1)情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におかれていないこと、(2)随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと、という条件を満たす必要があると定めています。

新型コロナウイルスの流行により、テレワークが急速に普及し、事業場外みなし労働時間制の適用事例が増加しましたが、今回の事例のように、会社からチャットやメールを通じて細かく指示をされている場合は、「使用者の指揮監督が及ばないために、労働時間の算定が困難な場合」には該当するとはいえません。労働時間はPCのログやメール、チャットでのやりとりから算出が可能で、今回のケースでも深夜にまで及ぶチャットも記録され、具体的な指示内容が残っていました。

このように、“自宅でテレワークをさせるから指揮命令下には置かれていないし、所定労働時間働いたとみなせるだろう”という判断は危険です。

3.費用負担

テレワークにおける通信費やIT関連機器の費用負担については、事前に会社が検討し、ルールを設ける必要があります。従業員がこれらの費用を負担する場合は、就業規則に明記しなければなりません。

4.人事評価

対面でのコミュニケーションが取れないがために、テレワークを行う従業員とそうでない者とで評価に偏りが出てしまうリスクについても考慮が必要です。人事評価方法についての十分な説明が行われているか、就業規則への記載も併せて確認してください。

5.テレワークをサポートするITツールの導入

今回の労災認定では、PCログやメール履歴など、客観的な記録により長時間労働が確認されましたが、テレワークにおける労働時間の適正な把握は労務管理において最重要課題となるでしょう。テレワークを行う最大のメリットは労働生産性の向上ですが、そのためにも、ITツールを効果的に活用し、従業員の健康と働きやすさを確保するための取り組みを今一度見直してみましょう。

 

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はじめに

政府は日本のスタートアップ企業に投資する「エンジェル投資家」を海外から呼び込む施策を2024年度にも始める方針だというニュースが飛び込んできました。これは我々実務家からすると驚くべきことで、なぜなら今まで「投資」という活動に対して在留資格(ビザ)が付与されることはなかったからです。いま現在、開示されている情報は少なくかつ不確かなものも多いですが、大まかな方針などをご紹介しようと思います。

まずは国家戦略特区でスタート

国家戦略特区とは“世界で一番ビジネスがしやすい環境”を作ることを目的に、地域や分野を限定することで、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度です。分野の1つに外国人材があり、今回は日本で不足しがちな成長資金の出し手を補うのが目的のようです。国家戦略特区は仙北市、仙台市、新潟市、東京圏(東京都、神奈川県、千葉市、成田市)、愛知県、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)、養父市、広島市・今治市、福岡市・北九州市、沖縄県がありますが、対象となる特区は東京、大阪、福岡、札幌などが手を挙げている段階です。特区での実績を踏まえて正式な在留資格として新設するのか検討されることになるでしょう。

どのような要件が必要か

内閣府の資料を基に現在検討されている主な要件をご紹介したいと思います。

実績要件:①②のどちらも必要
①経営・管理領域での実務経験、若しくは投資家としての実績があること
②スタートアップの有する技術、アイデアを目利きする能力があること

以下の経歴により判断
・特定分野での実績(特定分野での実務経験、投資家経験、起業実績、研究実績)
・表彰歴・知名度(受賞歴、メディア掲載実績、特定分野の協会役員等)
・信頼のある人物からの推薦

資産要件一定額以上の資産があること
投資額要件一定額以上を投資する計画があること(数千万円~1億円程度)
居住要件特区における住民登録が必要
投資先要件特区内に拠点を設けるスタートアップ
適格要件投資家の身分確認として無犯罪証明書を提出
投資・育成計画都内のスタートアップの成長促進に向けた活動ビジョンを示していること
SU育成投資先へ助言等を行い、スタートアップを支援すること

 

その他注意事項

今まで「投資」をすることで日本で在留資格を得られないのかという問い合わせを数多く受けてきましたが、もし本制度が施行されれば多くの投資家が興味をもつことになります。弊社では確かな情報が入り次第、続報をお届けする予定です。