RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年6月号
2024年6月3日
新リース会計基準について・「くるみん」認定について・取締役及び会計監査人の任期
日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税務より「新リース会計基準について」、労務より「くるみん認定について」、司法書士法人より「取締役及び会計監査人の任期」について取り上げます。
労務で取り上げる「くるみん」とは、次世代育成支援対策推進法に基づく、積極的な子育て支援や女性の活躍支援に取り組んでいる企業が受ける認定です。令和6年度税制改正大綱において、税額控除率の上乗せの要件として、「くるみん」認定が追加されたことで注目されています。労務では、今回より二回に分けてくるみん認定についてお届けします。活用をご検討される企業も増える制度かと思いますので、今回のNewsLetterを是非ご活用ください。
はじめに
企業会計基準委員会(ASBJ)は、日本基準と国際的な会計基準との整合性を図る取組みの一環として、リース取引について2023年5月に企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等(以下、新リース会計基準)を公表しました。新リース会計基準では、IFRS16との整合性の観点から、借手のすべてのリースについて資産及び負債がオンバランスされることから、リースに係る会計処理及び開示の大幅な改正と幅広い業種の企業への影響が予想されています。今回は、新リース会計基準の大枠を掴むと共に、想定される税務上の論点も考えてみたいと思います。
新リース会計基準の基本方針
ファイナンスリースとオペレーティングリースの分類を廃止し、借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上し、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデルを採用することが提案されています。
リースの定義・識別・リース期間
下表の通り、リースの範囲を明確にし、「リース期間=契約期間」とは限らないことが明示されています。
リースの定義 | 「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部分」 |
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リースの識別 | ①契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含む。 ②特定された資産の使用期間全体を通じて、次のいずれも満たす場合、当該契約の一方の当事者(サプライヤー)から当該契約の他方の当事者(顧客)に、当該資産の使用を支配する権利が移転している。 a.顧客が、特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんど全てを享受する権利を有し b. 顧客が、特定された資産の使用を指図する権利を有している。 ③借手および貸手は、リースを含む契約について、原則として、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行う。 |
リース期間 | 「借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間」 + ①借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間 + ②借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間 |
借手のリース会計処理
- 当初認識(資産負債の計上額)
リース負債 リース開始日において、リース料総額の未決済部分を現在価値に割り引いて算定 使用権資産 リース負債の計上額に、リース開始日までに支払った前払リース料及び付随を加算して算定 - 事後測定(利息計上と減価償却)
リース負債
(利息総合額の各期への配分)原則として、利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に利息法により配分(実効金利法による償却原価法) 使用権資産
(減価償却)通常、以下の耐用年数・残存価額にて定額法を採用。
耐用年数 残存価額 原資産の所有権が
借手に移転経済的使用可能予測期間 合理的な見積額 上記以外 リース期間 ゼロ - 短期リース・少額リースへの例外規定
以下の場合、使用権資産やリース負債を計上せず、リース料総額をリース期間に渡って原則として定額法により費用処理できます。短期リース リース期間が12カ月以内のリース 少額リース ①企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、リース契約1件当たりの借手のリース料が300万円以下のリース ②原資産の価値が新品時におよそ5,000米ドル以下のリース(新設)
想定される税務上の論点
新リース会計基準の適用に伴う税制改正が見込まれます。使用権資産やリース負債が税務上の資産負債として認められるか、リース料を損金として処理していたオペレーティングリースの税務上の取扱い、リース負債に係る利息部分が税務上の利息として認められるか、使用権資産の減価償却額と税務上の償却限度額の税務調整などの論点が想定されます。
おわりに
新リース会計基準への対応にあたっては、リース契約の見直しだけではなく、関連する業務プロセスやシステムの見直しが必要な場合も考えられます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。
「くるみん」認定について
令和6年度税制改正大綱において、子育て支援や女性活躍の推進を強化するため、新たな税制優遇措置が導入されることが発表されました。具体的には、「くるみん・プラチナくるみん」や「えるぼし・プラチナえるぼし」の認定を受けた企業には、税額控除率に5%の上乗せが行われることになります。
「くるみん」や「えるぼし」の認定は、次世代育成支援対策推進法に基づく制度であり、企業が積極的な子育て支援や女性の活躍支援に取り組んでいることを証明するものです。政府の取り組みにより、子育てや女性の社会進出を後押しし、企業の社会的責任の一環としての活動が促進されることが期待されます。今回から2回にわたって、くるみん認定の流れについて解説していきます。
「くるみん」とは
一般事業主が子育て支援を促進するための行動計画を作成し、その目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、厚生労働大臣から「子育てサポート企業」として認定されます。この認定を受けた企業は、「くるみん認定」と呼ばれ、その証として「くるみんマーク」を取得します。
「くるみん」認定までの流れ
- 行動計画の策定
- 公表と労働者への周知
- 行動計画の届出
- 行動計画の実施
- くるみん認定・トライくるみん認定→プラチナくるみん認定
それではより詳しく見ていきましょう。
①行動計画策定
自社の現状や労働者のニーズを把握し、仕事と子育ての両立にあたって障害となっている課題を見つけ、解決のための行動計画を策定します。これを一般事業主行動計画と呼びます。
行動計画の例は厚生労働省HPに様々なタイプのモデル計画が掲載されています。ぜひ参考にしてみてください(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/jisedai/)
くるみん認定を受けるためには、この行動計画で掲げた目標とくるみんの認定基準がリンクしている必要があるため、事前に各都道府県労働局雇用環境均等部(室)へ計画内容を確認しておくと間違いないでしょう。
②公表と労働者への周知
行動計画を策定したら、策定の日からおおむね3ヶ月以内にその計画を一般に公表し、労働者へも周知を行います。公表の方法は自社HPへの掲載など自由ですが、厚生労働省が運営する女性の活躍・両立支援総合サイト「両立支援のひろば」への掲載も可能です。
③行動計画の届出
行動計画の策定と並行に、策定の日からおおむね3ヶ月以内に「一般事業主行動計画策定届」を各都道府県労働局雇用環境均等部(室)に届出ます。
④行動計画の実施
行動計画に掲げた対策を実施し、仕事と子育ての両立をめざし、目標を達成するための取組を実施しましょう。
⑤くるみん認定・トライくるみん認定→プラチナくるみん認定
くるみん認定を受けるためには10項目の認定基準をすべて満たす必要があります。
詳しい認定基準は厚生労働省ホームページをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/03page8_14kurumin.pdf
認定基準の1〜10をすべて満たしたら、いよいよくるみん認定申請です。
くるみん認定の申請は、「基準適合一般事業主認定申請書(様式第二号)」に必要書類を添付し、郵送・持参・電子申請のいずれかの方法により、行動計画を届出た労働局雇用環境均等部(室)に行います。
添付書類を抜粋します(厚生労働省「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・トライくるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!!!(令和6年1月)パンプレットより」)。
いかがでしたでしょうか。 次回は、「くるみん」認定基準の10項目について詳説していきます。
はじめに
定時株主総会を議案を検討するときは、役員及び会計監査人の任期を確認し必要に応じて再任の議案を盛り込みます。
ここでは取締役について取り上げますが、株式会社の取締役には必ず任期があり、その任期は「①選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」です。この任期は定款又は株主総会の決議によって短縮することが可能です。また、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除き、以下「非公開会社」といいます)においては、定款に定めることにより取締役の任期を「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」伸長することができます。監査等委員会設置会社の取締役(監査等委員であるものを除きます。)の任期は①の「2年」が「1年」となり、監査等委員である取締役の任期は①の期間を短縮することができません。加えて、指名委員会等設置会社の取締役の任期は①の「2年」が「1年」となります。
株式会社の多くは非公開会社ですので、以下非公開会社を前提としています。
補欠又は増員により選任された取締役
補欠又は増員により選任された取締役の任期につき、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする旨が定款に定められるているケースは少なくありません。この定款の定めがある株式会社は、取締役が異なる時期に選任されている場合でも、各取締役の任期が同じタイミングで満了する可能性があり、増員又は補欠取締役の任期を間違えてしまうと、職務を続けてもらおうと思っていた増員又は補欠取締役が任期満了により退任してしまうこともあるので注意が必要です。
取締役の任期の短縮
株式会社はいつでも定款を変更する方法により取締役の任期を短縮することも可能であり、任期を短縮すると現存の取締役の任期もその影響を受けます。任期が短縮された結果、現存の取締役が変更後の任期を経過しているときは、任期を短縮したタイミングで任期満了により退任します。なお、この場合において現存の取締役を再任しない場合、解任をしたものと同等の効果が生じるため、正当な理由ある場合を除き損害賠償請求の対象となり得ます。
事業年度の変更と取締役の任期
事業年度を変更すると現存の取締役の任期もその影響を受け、現存の取締役の任期が数ヶ月短くなることがあります。
取締役ごとに異なる任期の定め
取締役ごとに異なる任期を定めることもできるものとされており、特定の取締役のみ任期を短くしたいというニーズもあります。
取締役の任期満了と再任
取締役の任期が満了するときは、現存の取締役が引き続き取締役を続ける場合でも再任の手続きが必要です。その場合、任期が満了す ることになる(主に定時)株主総会の決議において取締役を再選する必要があります。この再選手続きを忘れてしまうと選任懈怠となり、会社法違反に該当してしまい過料の対象となります。
取締役の再任と登記
取締役が就任(再任を含む)したときは、その旨の登記をする必要があります。この登記手続きを忘れると登記懈怠となり、会社法違反に該当してしまい過料の対象となります。取締役の構成員に変更が生じない会社の場合は特に、任期が満了する取締役の再任手続き及び登記手続きは忘れやすいポイントですのでご注意ください。