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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年7月号

2024年7月2日

役員報酬の税務上の取扱い・「くるみん」認定について2・育成就労制度に係る法改正

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「役員報酬の税務上の取扱い」、労務より「くるみん認定について2」、行政書士法人より「育成就労制度に係る法改正」について取り上げます。

先月より2回に渡って労務で取り上げる「くるみん認定」では、くるみん認定を取得するにあたって満たす必要のある認定基準について詳しくまとめています。

認定基準は全部で10項目あり、くるみん認定の取得を目指す上では内容を細かく確認することが必要です。基準を満たす上での注意点についても一緒に確認している内容となっていますので、くるみん認定について検討中の際には、是非お役立てください。

 

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はじめに

企業の持続的な成長と企業価値向上を目的としたコーポレートガバナンス・コードの適用を背景に、日本では役員報酬の見直しが進んでいます。特に、中長期的な業績と連動する株式報酬制度の導入が増えています。今回は従来からある金銭報酬及び、昨今注目が高まっている株式報酬について、概要と税務上の取扱いを見ていきたいと思います。

役員報酬の法人税法上の取扱い

法人税法上、従業員の給与は賞与も含めて全額損金可能ですが、役員報酬は損金算入の条件が厳しくなっています。具体的には法人税法では、役員報酬は「役員給与」と呼び、次の3つのみが損金として認められます。

①定期同額給与

定義毎月または一定期間ごとに同じ金額が支給される役員給与
詳細支給時期が1カ月以下の一定の期間ごとで、支給額が毎回同じであること。よって中途での金額等変更は損金算入認定が難しくなる。
毎月一定額が支給される役員の月給

②事前確定届出給与

定義予め定められた時期に確定した金額を支給する役員給与
要件支給額を支払時期を事前に定め、その内容を所轄税務署に届出すること。よって届出内容と異なる支給をすると損金算入不可。
支給額と支払時期を事前に税務署に届け出ている役員給与

③業績連動給与

定義会社の業績指標に連動して変動する役員給与
要件会社の利益や株価、売上などの業績指標と連動させて報酬を支給し、一定の要件を満たすこと。この際、業績指標の基準や計算方法が客観的かつ合理的に定められている必要がある。
会社の利益に応じて支給額が変動する役員給与

株式報酬制度

上述の3パターンを含む従来からある役員報酬は短期的なインセンティブとなるものが多いですが、株式報酬は中長期の評価期間を対象とする長期インセンティブといえます。即ち、役員が株式を保有することで、会社業績や株価上昇に直接的な利害関係を持ち、企業パフォーマンスの向上や優秀な役員のリテンションに効果が見込まれます。「譲渡制限付株式(RS)」と「パフォーマンス・シェア(PS)」は代表的な株式報酬の形態ですので、以下にその特徴をまとめます。

①譲渡制限付株式(RS: Restricted Stock)

定義・譲渡制限期間を設けた実株を無償で付与するスキーム
・一定の条件(一定期間の在職、特定の業績目標の達成、契約条件の達成等)が満たされるまでは譲渡することを制限
報酬決定付与時点で株式数量を約定
役員の課税報酬株式対象の株式の時価に基づいて給与所得として課税(退職が譲渡制限解除要件の場合は退職所得として課税)
法人税の損金算入可否事前確定届出給与の要件を満たす場合には損金算入可能
効果実株を持つことにより株価の上昇による長期的なインセンティブや企業忠誠心とリテンション効果

②パフォーマンス・シェア(PS: Performance Share)

定義・一定の業績指標(売上高、利益、株価など)の達成度に応じて株式を付与するスキーム
・業績指標の達成度合いに応じて付与される株式の数量や価値が決定
報酬決定業績達成度合いに基づき株式数量が変動
役員の課税業績指標達成による株式交換時の付与された株式の時価に基づいて給与所得として課税
法人税の損金算入可否業績連動給与の要件を満たす場合に損金算入可能
効果業績目標の達成に対する強いインセンティブ

おわりに

今回は、多様化する役員報酬の特徴や税務上の取扱いを見てみました。現状、日本の役員報酬水準は欧米に比べて非常に低い水準にあります。要因としては、内部昇格の役員が多い日本では従業員報酬との公平性が重視される傾向があることなども挙げられますが、中長期インセンティブの株式報酬の割合が低いことも一因といえます。企業の持続的成長のためには、役員の長期インセンティブに繋がる適切な報酬制度の設計が重要です。各報酬制度を含め、ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

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くるみん認定概説2

次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん認定」は、子育て支援に積極的な企業を評価する制度です。先月号で解説したくるみん認定の流れを踏まえ、今回の記事では、くるみんを取得するために必要な10項目の認定基準について詳しく解説します。これらの基準を理解し、子育てサポート企業PRに向け、くるみん認定を目指しましょう。

それぞれの認定基準とポイントや注意点について、順を追って解説します。

まず、認定基準1~4は、先月号で記載した「行動計画」の策定ステップ①~④とリンクしています。

認定基準1.

雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らし適切な行動計画を策定したこと。

認定基準2.

行動計画の計画期間が、2年以上5年以下であること。

認定基準3.

策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成したこと。

認定基準3のポイントとしては、目標を達成したことを証明する資料の添付が必要です。制度導入が目標とされている場合は、導入後の就業規則などの写しや、育児休業等取得率の数値目標を設定している場合は、実際に育児休業等をした対象労働者の情報書類を添付します。

認定基準4.

策定・変更した行動計画について、公表および労働者への周知を適切に行っていること。

次に、認定基準5では男性労働者の,認定基準6では女性労働者の、育児休業等取得率の達成が必要となります。

認定基準5.

次の(1)または(2)のいずれかを満たしていること

  • (1)計画期間における、男性労働者の育児休業等取得率が10%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること。
  • (2)計画期間における、男性労働者の育児休業等取得率および企業独自の育児を目的とした休暇制度利用率が、合わせて20%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること、かつ、育児休業等を取得した者が1人以上いること。

認定基準6.

計画期間における、女性労働者の育児休業等取得率が75%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること。

認定基準5,6では、数値算出の際、認定申請時にすでに退職している労働者は含まれないことや、育児休業を分割して取得した労働者がいた場合でも、同一の子についての利用である場合は1人カウントとされることに注意が必要です。

また、労働者数が300人以下の事業主であれば、数値目標が達成できていなかった場合の救済措置もあるため、諦めずにチェックしていきましょう。

認定基準7.

3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者について、「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置に順ずる制度」を講じていること。

認定基準7では制度の導入措置が掲げられているため、行動計画に盛り込んでいる必要があります。行動計画の目標の1つにこの認定基準7を盛り込み、認定基準3である行動計画の実施、目標達成を満たすことでクリアされます。

このように、くるみん認定の流れで記載したように、行動計画の策定がとても重要となります。

認定基準8.

計画期間の終了日に属する事業年度において次の(1)と(2)のいずれも満たしていること。なお、認定申請時にすでに退職している労働者は(1)・(2)のいずれも、分母にも分子にも含みません。

  • (1)フルタイムの労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満であること。
  • (2)月平均の法定時間外労働60時間以上の労働者がいないこと。

認定基準8では、残業時間に触れていますが、(1)では、全フルタイム労働者等の時間外・休日労働時間の合計数を全フルタイム労働者等の人数で除した数値がどの月も45時間未満である必要があります。また、(2)では、60時間を超えているかどうかについて、労働者ごとに1人1人チェックしていきます。

認定基準9.

次の①~③のいずれかの措置について、成果に関する具体的な目標を定めて実施していること。

  1. 所定外労働の削減のための措置
  2. 年次有給休暇の取得の促進のための措置
  3. 短縮正社員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置

認定基準9での重要ポイントは、上記①~③のいずれかの措置は、必ずしも行動計画の目標に含める必要はないということです。つまり、行動計画の目標として定められていない場合は、実際に達成されたかという結果までは求められていない、ということになります。もちろん行動計画に成果に関する具体的な目標を定めた場合は、認定基準3のとおり、目標達成が必須となります。

認定基準10.

法および法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと。

いかがでしたでしょうか。今回は、くるみん認定基準の10項目について、その内容と注意点をメインに解説してきました。くるみん認定を受けることで税制優遇措置が受けられることはもとより、企業としての社会的評価や従業員満足度の向上、採用力強化にも繋がるでしょう。是非これを機に、自社の働き方を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

 

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はじめに

技能実習制度に変わり、育成就労制度のための出入国在留管理法などの改正法が2024年6月14日参議院本会議で可決、成立しました。技能実習制度下においては制度目的である技能等の移転による国際協力の推進とは裏腹に安価な労働力の確保としての制度利用、技能実習生の失踪問題、劣悪な就労環境など様々な問題がありました。育成就労制度の創設に伴い不法残留者を雇用した場合等に課せられる不法就労助長罪の厳罰化など出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」という)の改正も併せて行われます。育成就労法と出入管法の観点からそれぞれみていきましょう。

育成就労法のポイント

育成就労法からみていきましょう。まず目的ですが、技能等の移転による国際協力の推進から特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保することに改正されたことにより、特定技能1号の人材育成と人材確保のための制度と位置付けられました。また技能実習制度では基本的に認められていなかった転職も①やむを得ない事情がある場合や、②同一業務 区分内であること(就労できる業務範囲のこと)、就労期間(1~2年の範囲で業務の内容等を勘案して主務省令で規定)・技能等の水準・転籍先の適正性に係る一定の要件を満たす場合認められることとなりました。技能実習制度の中核にいた監理団体は監理支援機関と名称を変え、外部監査人の設置を許可要件とされます。

入管法改正のポイント

技能実習の在留資格が廃止され、それに伴い育成就労産業分野に属する技能を要する業務に従事すること等を活動内容とする在留資格「育成就労」が創設されます。外国人に不法就労活動をさせた場合等に課せられる不法就労助長罪の罰則を引き上げます。不法就労とは不法入国者やオーバーステイの者を就労させたり、本来の活動の範囲外の活動を行うことをいいます。これは悪質なブローカー対策や受入機関の清浄化の狙いがあろうとい えます。また永住制度適正化も行われ納税や社会保険料の納付を故意に行った場合など取消の対象になります。これは育成就労から特定技能をへて永住許可申請ができることに伴い、永住者数が増加するための措置といえま す。現行制度では技能実習で最大5年(1号1年・2号2年・3号3年)、特定技能で5年その後の特定技能2号では更新回数に定めがなく、継続して在留することが可能となります。改正後は育成就労3年以降特定技能については現行制度と一緒です。

その他注意事項

海外に移動する労働者数は主に台湾、韓国との競争が激化しておりベトナム、インドネシア、中国の海外に移動する労働者数において台湾、韓国と比較すると日本の相対順位が低下傾向にあり、また昨今の物価高・円安の影響をうけて今後ますます海外人材の確保が困難となります。日本は2040年までに1200万人の生産年齢人口が減少される見通しの中、外国人材がより貴重な労働力となることは確実です。

技能実習、特定技能はもとより、外国人の在留資格に関してお悩みがあれば是非一度弊社へご連絡いただければ幸いです。