RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年2月号
2025年2月3日
令和7年度税制改正・介護休業制度と助成金・代表取締役の選定
日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。
今月のニュースレターでは、税理士法人より「令和7年度税制改正」、社会保険労務士法人より「介護休業制度と助成金」、司法書士法人より「代表取締役の選定」についてお届けします。
税理士法人では、令和7年度税制改正大綱における個人所得課税の注目論点について、社会保険労務士法人では2025年の法改正を含む「介護休業制度」と「介護休業取得応援奨励金」について、司法書士法人では代表取締役の選定に関するポイントについて、分かりやすく解説しています。
今月のニュースレターも、ぜひお役立てください。
はじめに
今回は2025年度税制改正大綱で、主に個人所得税に関わる注目論点を取り上げます。
物価上昇時における税負担及び就業調整への対応(いわゆる「103万円の壁」への対応)
①基礎控除の引上げ
所得税の基礎控除額が、合計所得金額2,350万円以下の個人に対し48万円から58万円へ引き上げられます。但し、個人住民税の基礎控除額(43万円)は据え置かれます。
②扶養控除及び配偶者控除要件の合計所得金額要件の引上げ
扶養控除の対象となる扶養親族及び配偶者控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件が、48万円以下から58万円以下に引き上げられます。
③給与所得控除の最低保障額の引上げ
所得税・個人住民税の給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられます。
④特定親族特別控除(仮称)の創設
19歳以上23歳未満の同一生計の親族の合計所得金額が123万円以下であれば、一定の控除が適用されます。
これらの改正は、2025年度分以降の所得税及び2026年度分以降の個人住民税について適用されます。
確定拠出年金制度等の見直し
①マッチング拠出の要件緩和
企業型確定拠出年金制度において、加入者掛金が事業主掛金を超えてはならないという制限が廃止されます。
②企業型確定拠出年金の拠出限度額の引上げ
確定給付企業年金に加入していない場合は月額5.5万円から6.2万円、確定給付企業年金に加入している場合は月額6.2万円(現行:5.5万円)から確定給付企業年金の掛金相当額を差し引いた金額に変更されます。
③iDeCoの加入対象拡大と拠出限度額引上げ
60歳以上70歳未満で、現行ではiDeCoに加入できない一部の方が加入可能となります。拠出限度額については、第1号被保険者は月額6.8万円から7.5万円へ、企業年金加入者は月額6.2万円(現行:2.0万円)から企業年金の掛金額を差し引いた額へ、企業年金未加入者(第1号被保険者及び第3号被保険者 を除く)は月額2.3万円から6.2万円へ引き上げられます。
退職所得の計算等に係る見直し
退職手当等の一時金を受け取る場合、過去に老齢一時金を受給している場合、勤続年数の重複排除調整期間が4年から9年に延長されます。また、退職所得の源泉徴収票の税務署提出義務が全ての居住者に拡大されます(現行:居住者である役員)。これらは、2026年1月1日以降の支払分から適用されます。
おわりに
2025年度税制改正大綱には、103万円の壁への対応や確定拠出年金制度の見直し等、家計に直結する重要な変更が含まれています。
この他、住宅ローン控除の延長・拡充、事業承継税制の役員就任要件および事業従事要件の緩和、グローバルミニマム課税への対応等も注目論点といえます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。
介護休業とは?-最新の助成金と法改正のおさらい
高齢化社会が進行するにつれて、要介護者の増加、介護者の高齢化、同居介護者の介護負担の増大など介護問題が深刻になってきます。従業員が家族を介護せざるをえない状況になる機会も多くなることが想定されます。そのような状況になった従業員をサポートする制度として介護休業制度があります。
本日は、介護休業の基礎知識について解説した上で、介護のために休まざるを得なくなった従業員をサポートする「介護休業取得応援奨励金」という制度を紹介し、最後に、最新の法改正について触れていきます。
1.介護休業とは…
「労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業」のことを「介護休業」と呼んでいます(厚生労働省HP:介護休業について|介護休業制度|厚生労働省)。
・対象となる労働者
対象家族を介護する男女の労働者(日々雇用を除く)
・利用期間と回数
対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。
※育児と違い、介護はいつまで続くかはわかりません。そのため、介護休業は「介護を行うための期間」ではなく、「介護のための準備期間」として設けられています。この期間中に、介護サービスの選定や手配、介護施設への入居手続きなどを行い、介護と仕事の両立を図るための生活スタイルを整えることが目的となります。そのため、93日という期間が定められています。
・手続方法
休業開始予定日の2週間前までに、書面等により事業主に申出。
2.「介護休業取得応援奨励金」とは…
東京都公益財団法人東京しごと財団と連携し、従業員に介護休業を取得させ、職場環境を整備した都内中小企業等に対して支給される助成金です。
つまり、「会社の従業員が介護のためにお休みを取れる環境を整えた場合、東京都がその会社に助成金として支援をしますよ」というものです。
導入のメリット
①従業員が安心して働ける
「介護のために仕事を辞めなければいけない…」と悩む従業員の不安を解消できます。
②企業イメージのUP
このような助成金を導入することで、従業員にとって安心して長く働ける職場づくりができ、企業のイメージUPに繋がります。
③介護休業制度導入のハードルを下げることができる
環境整備にかかる費用が一部補助されることで、導入を検討している事業主の後押しに繋がります。
誰がもらえる?
東京都内の中小企業。その中でも、従業員が介護休業を取りやすい環境を整えた企業が対象になります。
何をしたらいい?
①希望する従業員に介護休業を取得してもらう
例)配偶者の介護する従業員に、15日以上の休業を与えます。介護休業から復帰後、3ヶ月以上仕事を続けてもらう
②会社の規則の変更を行う
柔軟性のある規則を設定する。例)数時間など、時間単位での介護休暇の取得も許可する
いくらもらえる?
従業員が15日以上の介護休暇を取得する ➡︎ 27万5000円
従業員が31日以上の介護休暇を取得 ➡︎ 55万円
申請期間は?
対象となる介護休業から原職に復帰し、3ヶ月経過した翌日から2ヶ月以内
企業にお勤めの方は、家族が介護が必要になった際、会社に上記のような制度があるかどうかを確認してみてください。介護休業制度を社内制度として設けることは、従業員の満足度UPと高い定着率にも繋がります。事業主の方は、ぜひこの機会に負担の少ない形で導入ができる、本奨励金を活用してみてください。
3.2025年法改正について
最後に、介護休業の法改正について簡単に触れておきましょう。2025年は介護休業の法改正も盛りだくさんです。
①介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
労使協定に基づき除外できる労働者の要件が緩和されます。
②介護離職防止のための雇用環境整備の義務
事業主は、介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、雇用環境整備に関する措置を講ずることが義務化されました。
③介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
事業主は、家族が介護に直面した旨を申し出た際や、直面する前の早い段階で、介護や介護両立支援制度等に関する事項の周知、情報提供を行わなければなりません。
④介護のためのテレワーク導入の努力義務
要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。
はじめに
3月末日を事業年度の末日とする株式会社は現在も多く、翌期が始まるタイミングに合わせて、4月1日から取締役や代表取締役を変更することを検討しているというケースは一定数あります。4月1日から新しい役員体制でスタートするためには新役員の選任行為が必要となるところ、4月1日当日に株主総会を開催して取締役を選任するのではなく、3月中に株主総会の決議によって4月1日付け で取締役を選任しておき、退任する取締役については事前に3月31日をもって辞任する旨の辞任届をもらっておくことで、4月1日の朝から新体制でスタートできるようにしておくことが多いでしょうか。
4月1日付けで就任する取締役や監査役を3月中に選任をすることは、会社法や定款の定めに反しない限り行うことができますが、一方で、代表取締役の交代が生じるときは、3月中に代表取締役の予選を行うことができるのかという問題があります。
代表取締役の選定方法
取締役会設置会社においては、定款に特段の定めがない限り、代表取締役は取締役会の決議によって選定します。また、定款に定めを置くことにより、株主総会の決議によっても代表取締役を選定することができるようにすることが可能です。この場合、定款の定めによっても取締役会から代表取締役を選定する権限をはく奪することはできません。
代表取締役の予選
代表取締役の就任に係る登記実務において、代表取締役を選定するときの取締役のメンバーと、当該代表取締役が就任した時の取締役のメンバーが一致していることが原則として求められます。株式会社X(取締役ABC、代表取締役B)において、3月20日に取締役会の決議により4月1日付けで代表取締役Aを選定した場合に、4月1日時点の取締役がADEであるときは、代表取締役Aの就任 登記の添付書面として3月20日付けの取締役会議事録では足りません。なお、代表取締役の選任時と就任時の取締役の構成員が変わらない場合(4月1日時点の取締役がABCの場合)は、代表取締役を予選することが可能です。
4月1日に取締役会の決議で代表取締役を選定する
株式会社Xのケースでは、4月1日に取締役ADE(と監査役)が取締役会を開催して代表取締役Aを選定する方法が考えられます。開催することが難しい場合は、定款にその定めがあることを確認の上、取締役会のみなし決議(書面又は電磁的記録)を行います。
3月20日に株主総会の決議で代表取締役を選定する
定款に定めることにより株主総会の決議によって代表取締役を選定することができることは前述のとおりです。取締役会による予選と異なり、株主総会で代表取締役を予選する場合は、取締役の構成員が変わることの影響を受けませんので、4月1日の前後で取締役の構成員が変わる場合においても、3月20日の株主総会において4月1日付けでAを代表取締役として選定することが可能となります。
役員登記申請に係る添付書類
株式会社Xのケースにおいて、4月1日付け取締役会の書面決議で代表取締役Aを選定した場合、登記申請の添付書面として取締役会議事録又は各取締役の同意書にADEが個人実印を押印し、ADEの印鑑証明書を用意することになり、3月20日付け株主総会の決議で選定した場合は、その議事録にBの会社実印を押すことでCの印鑑証明書までは不要となる等、ケースによって各書類に押す印鑑 や準備する書類は大きく異なります。押印ではなく電子署名をする場合、登記に使用できる電子署名は限られています。
役員の方に何度も印鑑を押し直してもらう、あるいは書類の準備を何度も依頼することが難しい場合、本件のようなケースの登記はやや複雑であるため、よく調べて手続きを進められるか、司法書士に登記手続きを依頼された方が無難です。