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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年10月号

2024年10月1日

外国人旅行者向け免税制度の改正・最低賃金の過去最大の引き上げ・代表取締役等住所非表示措置の導入

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。

今月のニュースレターでは、税理士法人より「外国人旅行者向け免税制度の改正」、社会保険労務士法人より「最低賃金の過去最大の引き上げ」、司法書士法人より「代表取締役等住所非表示措置の導入」について取り上げます。

税理士法人では、免税品の不正な国内転売防止を目的に、2024年度税制改正で変更された「輸出物品販売場制度」について解説しています。また、社会保険労務士法人からは、過去最大の引き上げとなった最低賃金について、その制度の概要をお伝えします。

さらに、司法書士法人では、株式会社の代表取締役等の住所を一部非表示にできる新しい措置について、その内容と留意点をまとめています。

今月のニュースレターも、是非お役立てください。

 

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はじめに

2024年度税制改正により、外国人旅行者等向けの免税制度である「輸出物品販売場制度」に関連する仕入税額控除に制限が加えられました。この改正は、免税購入品は国外への持ち出しが前提とされているにもかかわらず、国内で転売される事例が増加していることを背景に、税の公平性を確保するために行われたものです。今回は免税品の消費税に関して従来の制度と問題点、及び今回の税制改正の内容と趣旨について見ていきたいと思います。

免税品に係る従来の制度とその問題点

「輸出物品販売場制度」とは、外国人旅行者等を対象に、特定の販売場(免税店)で商品を購入する際、消費税が免除される制度のことです。制度概要と目的は以下の通りです。

対象者原則として日本国内に6か月以上居住していない非居住者(外国人観光客や海外在住の日本人)
目的訪日外国人の消費を促進し、日本経済の活性化を図ること
所定の手続購入者は旅券(パスポート)等を提示し、非居住者であることを証明し、通常は出国時に免税購入品を国外に持ち出すことを税関にて確認される。
販売者は購入記録票を作成し、購入者から購入者誓約書を受領する。
免税対象品電化製品、衣類、化粧品、アクセサリー、その他の一般商品

 

しかしこの制度により、国外に持ち出されるべき免税購入品が国内で不正に転売され、国内事業者がこれらの免税品を買い取る場合には、免税取引に該当せず、仕入税額控除の対象となり、不正な取引が助長されるといった悪循環、及び外国人旅行者が出国時に免税購入品を所持していない場合において消費税の徴収が困難となり、その多くが滞納されるといった問題が生じていました。

2024年度税制改正内容とその趣旨

2024年度税制改正では、2024年4月1日以降に国内事業者が免税購入品と「知りながら」仕入れた場合、その仕入れに係る消費税額について仕入税額控除の適用を受けられなくなります。当該「知りながら」の判断基準としては、例えば次のような状況が含まれます。

1免税品特有のパッケージや痕跡が残っている場合
2取引履歴ややり取りの記録から、免税品であることが推測できる場合
3非居住者からの仕入れであることが本人確認書類などから推測できる場合

 

これらの状況においては、明白な証拠がなくても、取引の頻度や規模、仕入れ時の確認状況を総合的に勘案して免税品であると認定される可能性があります。

また、古物商などが免税品を仕入れる場合も、事実関係から「知りながら」仕入れたと判断されれば、インボイス制度における古物商特例が適用されていても仕入税額控除は認められないことになります。

改正の趣旨は、免税品が国外で消費されることを前提とする免税制度の本来の目的を守り、国内での不正な転売や税逃れを防ぐことにあります。これにより、国内で消費される商品に対して適正な消費税が課され、税の公平性が強化されることが期待されています。

おわりに

今回の税制改正は、免税制度の不正利用に対処するための重要な一歩といえます。国内事業者には取引時の確認作業の徹底と取引の透明性の確保がより一層求められます。更に、今後政府の免税販売管理システムの導入により、免税購入品の国外持ち出し確認が厳格化される見込みです。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

 

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最低賃金2024

2024年8月29日、厚生労働省は、全国の最低賃金を平均51円引き上げることを正式に決定しました。この引き上げにより、全国の最低賃金平均は1,055円となり、過去最大の引き上げ幅となります。

最低賃金は、労働者が生活できる最低限の賃金を保証するために設定された制度です。毎年、労働者や経営者、政府の代表者による協議を経て、地域ごとに決定されます。今年度は全国平均で過去最大の51円アップとなり、東京都では来年にも1200円を突破する見通しとなっています。この背景には、物価上昇や労働力不足が影響しています。

今回の記事では、最低賃金とは?その決定方法などを解説しつつ、今年度の状況について触れていきます。

最低賃金は、労働者の生活を支えるために、都道府県などの地域や、特定最低賃金といって、産業別に設定される最低賃金があります。一般的に言われる最低賃金は、地域ごとに決定されるものですが、その決定プロセスは以下のように進められます。

1. 中央最低賃金審議会の提言

まず、厚生労働省の下に設置された「中央最低賃金審議会」が、全国の経済状況や物価、雇用の動向を考慮して、最低賃金の改定に関する目安を示します。この審議会は、労働者代表、使用者代表、学識経験者からなるメンバーで構成されています。

2. 各都道府県の審議会で議論

中央最低賃金審議会の提言を受けて、各都道府県に設置された「地方最低賃金審議会」が、地域の経済状況や企業の支払能力などを踏まえ、具体的な金額を決定します。このプロセスでは、地域ごとの事情が考慮され、都市部と地方で異なる最低賃金が設定されることが一般的です。

3. 改定と公示

審議会での決定後、各都道府県の知事が最低賃金を公示し、一定の周知期間を経て正式に改定が行われます。

また、最低賃金の決定には、労働者が生活できる賃金水準、企業の経済力、物価上昇率などのバランスが取られることが重要です。今年度は、物価の上昇や人手不足などの影響を受け、過去最大の引き上げとなりました。

この決定は、中央最低賃金審議会が提案した目安を基にしており、物価上昇や労働力不足が影響した結果です。新しい最低賃金は、2024年10月から全国各地で段階的に適用される予定です。

以下に、令和6年度の地域別最低賃金の答申状況URLを記載します(厚生労働省HPより)。
001297510.pdf (mhlw.go.jp)

厚生労働省では、令和6年度の地方最低賃金賃金審議会の答申のポイントを次のように述べています。

  1. 47都道府県で、50円~84円の引上げ
  2. 改定額の全国加重平均額は1,055円(昨年度1,004円)
  3. 全国加重平均額51円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額
  4. 最高額(1,163円)に対する最低額(951円)の比率は、81.8%(昨年度は80.2%。なお、この比率は10年連続の改善)

最高額の東京都(1,163円)と最低額の地域との差は約200円となり、全国で賃金格差の縮小も進んでいます。また、この引き上げによって、最低賃金が労働者の生活水準を維持するための重要な役割を果たしていることが再認識されました。

最低賃金は労働者の生活を守り、経済全体に影響を与える重要な制度です。2024年度は、全国平均で51円の過去最大の引き上げとなり、物価上昇や労働力不足といった経済的な背景がその要因となっています。この改定により、全国の最低賃金平均は1,055円となり、特に都市部では賃金が急上昇しています。

最低賃金の決定は、労働者や使用者、政府の代表者が協議を重ね、経済状況や地域差を考慮して行われます。今回の大幅な引き上げは、労働者の生活水準向上に寄与する一方で、企業側にも負担が生じるため、バランスを取ることが引き続き課題です。今一度、自社の給与体系を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

 

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はじめに

株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下「代表取締役等」といいます。)の住所は登記事項であるため、登記事項証明書を取得すれば誰でもその住所を確認することができます。自身の住所が公開されることへの抵抗感がある等の声の高まりを受け、プライバシー保護及び起業促進の観点から、令和6年10月1日以降、代表取締役等住所非表示措置(以下「非表示措置」といいます。)を講じることを申し出ることができるようになりました。

非表示措置の対象となる法人等

非表示措置の制度の対象は株式会社のみであり、合同会社・一般社団法人・有限責任事業組合等の法人・組合は現在のところその対象ではありませんので、代表社員や代表理事等の住所を非表示にすることはできません。

非表示措置の対象となる証明書等

登記事項証明書・登記事項要約書・登記情報提供サービスに非表示措置が講じられます。

非表示措置を申出ることができる時期

非表示措置の申出はそれ単独で行うことはできず、設立の登記・代表取締役等の就任(重任)登記・代表取締役等の住所移転による変更登記・管轄外への本店移転の登記等の特定の登記申請と同時に行うことができます。

最小行政区画までは登記される

非表示措置が講じられた後も、登記事項証明書等には代表取締役等の住所の最小行政区画までは記載されますので、完全に非表示となるわけではありません。代表取締役等の住所が「東京都港区新橋●丁目●番●号」の場合、非表示措置が講じられた後は、登記事項証明書等には「東京都港区」まで記載されることになります。

過去に登記された住所は消えない

非表示措置が講じられたとしても、非表示措置の申出がされた後はその効果を得られますが、過去に登記された代表取締役等の住所まで非表示となるわけではありません。登記された住所が「東京都港区新橋●丁目●番●号」である代表取締役(住所に変更はない)が重任登記+非表示措置の申出をした場合、重任登記における当該代表取締役の住所につき登記事項証明書等には「東京都港区」と記載されますが、それ以前に登記された「東京都港区新橋●丁目●番●号」は残ったままです。なおこの場合、重任時の住所につき東京都港区内で移転したのかどうかまでは、登記事項証明書等からは分からないことになります。

非表示措置の申出に必要となる書面

非表示措置の申出をするときは必要となる書面の提出が求められます。必要となる書面は下記法務省のWEBサイトをご確認ください。
代表取締役等住所非表示措置について(法務省)

非表示措置後も住所変更登記は必要

非表示措置が講じられた後も、代表取締役等に住所の変更が生じたときは、変更時から2週間以内にその住所変更の登記申請が必要な点に変わりはありません。なお、この代表取締役等の住所変更登記後も非表示措置を継続するのであれば、当該登記申請と同時にその申出をする必要があります。

非表示措置のデメリットはあるか

非表示措置が講じられると登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができなくなりますので、金融機関から融資を受けるに当たり不都合が生じたりする等の一定の影響が生じる可能性があるとされています。この制度はスタートしたばかりでありその影響が明確ではありませんので、非表示措置の申出をするかどうかはその点を考慮してご検討ください。