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藤井 淳平 Jumpei Fujii

この記事の著者

藤井 淳平 Jumpei Fujii

ディレクター  / 税理士

【税務Q&A】自己株式取得に伴うみなし配当の益金不算入について

2025年2月17日

質問

A社は非上場会社であり、B社はA社の発行済株式総数の40%を単独で継続して保有しています。

この度、A社はB社からの相対取引により自己株式を取得することになりました。取引によりB社にはみなし配当が生じますが、そのみなし配当額は受取配当金等の益金不算入の対象に該当するかご教示ください。

回答

B社はA社の発行済株式の40%、すなわち発行済株式の3分の1超を継続保有していることから、B社が保有するA社株式は関連法人株式等に該当すると考えられます。

従って、A社による自己株式の取得により生じたみなし配当の金額から支払利息相当額を控除した部分が、益金不算入となるものと判断できます。

重要用語

質問及び回答で言及されている「みなし配当」「受取配当金の益金不算入」について説明します。

みなし配当

会社法上は配当に該当せず、株主が会社から実際に配当金を受け取っていない場合でも、税法上は利益分配がなされたとみなされ、課税対象となる金額を指します。みなし配当が発生するケースとしては、以下のようなものが考えられます。

自己株式の取得

会社が自己株式を取得し、その取得対価が当該株式に対応する資本金等の額を超える場合、その超過額はみなし配当として扱われます。ただし、証券取引所での取得は除外されます。

非適格合併

合併が行われた際、税法上の「適格要件」を満たさない場合、みなし配当が発生することがあります。具体的には、消滅法人の株主が合併法人の株式ではなく金銭を受け取る場合、その金額が資本金等の額を超える部分について、みなし配当として扱われます。

非適格分割型分割

企業が分割型分割を実施し、分割元法人の株主が新設法人又は分割先法人の株式を取得する場合、分割元法人の資本金等の額を超える利益分配部分は、みなし配当として扱われます。

資本の払戻し

会社が株主に対して、資本剰余金を原資として金銭を払い戻す場合、払戻金額のうち資本金等の額を超える部分は、みなし配当として扱われます。

残余財産の分配

会社が解散し、株主へ残余財産を分配する場合、分配額のうち資本金等の額を超える部分は、みなし配当として扱われます。

受取配当金の益金不算入

内国法人が他の法人から受け取る配当金について、一定の要件を満たす場合、その全額又は一部が益金の額に算入されず、法人税が課されない仕組みです。これは、二重課税を回避することを目的とした制度です(法人税法23条)。

益金不算入額は、保有する株式等の持株比率に応じて、次の4つに分類されます。

① 完全子法人株式等(持株比率100%)

  • 定義:発行済株式の100%を直接又は間接的に保有し、配当の計算期間の初日から末日まで、継続して完全支配関係がある場合。
  • 益金不算入額:配当等の額×100%

② 関連法人株式等(持株比率3分の1超 100%未満)

  • 定義:発行済株式の総数の3分の1超から100%未満を、配当の計算期間の初日から末日まで引き続き保有している場合。
  • 益金不算入額:配当等の額から、関連法人株式等に係る負債利子額を控除した金額。

③ その他の株式等(持株比率5%超 3分の1以下)

  • 定義:①完全子法人株式等、②関連法人株式等、④非支配目的株式等(後述)のいずれにも該当しない場合。
  • 益金不算入額:配当等の額×50%

④ 非支配目的株式等(持株比率5%以下)

  • 定義:発行済株式の総数の5%以下を、配当等の基準日等において保有している場合。
  • 益金不算入額:配当等の額×20%%

特に、完全子法人株式等及び関連法人株式等については、配当の計算期間全体を通じた保有状況が重要な判定要素となる点に留意が必要です。

また、②関連法人株式等に係る配当等の益金不算入額は、配当等の額から関連法人株式等に係る負債利子額を控除した金額となりますが、この負債利子額の計算方法は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度より変更されています。

具体的には、配当等の額の4%相当額とされています(法人税法23条1項、法人税法施行令19条1項)。ただし、法人が借入金等の利子を支払っている場合、その事業年度における支払利子等の額の10%相当額を上限とすることができます(法人税法施行令19条2項)。

質問に対する判断

B社に生じるみなし配当は、配当等の額から負債利子額を控除した後の金額が益金不算入の対象となります。その根拠は以下の通りです。

1. みなし配当の発生

A社がB社から自己株式を取得する際、その対価のうちA社の資本金等の額を超える部分がみなし配当となります(法人税法24条1項5号)。

2. 関連法人株式等の判定

B社はA社の発行済株式総数の40%を継続して保有しており、配当の計算期間を通じて3分の1を超えて保有しているため、B社が保有するA社株式は関連法人株式等に該当します(法人税法23条4項)。

3. 益金不算入の適用

関連法人株式等に係るみなし配当は、負債利子額を控除した後の金額が益金不算入となります(法人税法23条)。

具体的な数値例

最後に、自己株式取得に伴うみなし配当の益金不算入額の計算について、簡単な数値例を用いて説明します。

【前提条件】

  • A社がB社から自己株式を取得した際の取得対価:1,500万円
  • 資本金等の額に対応する部分:500万円
  • B社が保有するA社株式は関連法人株式等に該当

【計算ステップ】

  1. みなし配当額の算出
    1,500万円-500万円=1,000万円
  2. 負債利子額の算出(配当額の4%と仮定)
    1,000万円×4%=40万円
  3. 益金不算入額の算出
    1,000万円-40万円=960万円

【結果】

自己株式取得に伴うみなし配当額1,000万円のうち、960万円が益金不算入となり、40万円が益金算入されることになります。

このように、自己株式取得に伴うみなし配当における益金不算入額の算定では、配当を支払った法人と受け取った法人の持株比率が重要です。特に、関連法人株式等に該当する場合は、負債利子額の計算が影響を与えるため、適切に考慮する必要があります。

国内税務Q&A_自己株式取得に伴うみなし配当の益金不算入について

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