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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年3月号

2023年3月1日

税制改正大綱・障がい者雇用に係る法改正・外国人高度人材の在留資格

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税務より「税制改正大綱」、労務より「障がい者雇用に係る法改正」、行政書士法人より「外国人高度人材の在留資格」について取り上げます。 税務にて取り上げる税制改正大綱では、国際課税に関わる論点を取り上げます。今回の改正ではOECD加盟国を中心に合意された、グローバルミニマム課税に関するものが盛り込まれたものとなっている為、非常に重要度の高い論点となっております。 また、行政書士法人では、外国人の高度人材に係る新たな在留資格を、労務からは障がい者雇用に係る法改正について、それぞれ取り上げます。いずれも企業における人材獲得・人材活躍に大きく関わる論点ですので、是非ご一読ください。

 

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はじめに

今回は2023年度税制改正の中でも国際課税に関わるグローバル・ミニマム課税の導入と外国子会社合算税制(CFC税制)の見直しについて掘り下げて見ていきたいと思います。

グローバル・ミニマム課税の導入

グローバル・ミニマム課税は、経済のデジタル化に伴う課税上の課題(BEPS2.0プロジェクト)において、OECD加盟国を中心に合意された二本の柱からなる基本設計のうち、「第二の柱」に位置づけられるものです。今回の税制改正で導入されるのは、「第二の柱」のうち、「所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)」と呼ばれるものであり、巨大多国籍企業グループの法人税負担の最低税率を15%に定める制度です。即ち、子会社等の税負担が最低税率(15%)を下回る場合、15%に至るまで最終親会社等の国で上乗せ課税される仕組みになります。これにより、多国籍企業グループが実効税率15%を下回る国に進出するインセンティブが失われ、国家間の税率引き下げ競争に歯止めがかかると言われています。対象企業は、直前4対象会計年度のうち、2年度以上の対象会計年度の年間連結総収入金額が7.5億ユーロ(約1,100億円)以上である多国籍企業グループ等に属する内国法人であり、適用時期は、2024年4月1日以降に開始する対象会計年度とされています。

なお、グローバル・ミニマム課税に関わる「情報申告制度」も創設され、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人は、「特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等の名称」、「構成会社等の所在地国ごとの国別実効税率」、「特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税額」等を、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3カ月(一定の場合は1年6カ月)以内にe-Taxにより、納税地の所轄税務署長に提供することが求められるようになります。

外国子会社合算税制(CFC税制)の見直し

外国子会社合算税制は、実質的活動を伴わない特定外国関係会社(ペーパーカンパニー等)を利用した租税回避に対処するために、当該特定外国関係会社の所得を内国法人等の所得と看做して合算して課税する制度です。

グローバル・ミニマム課税の導入により、対象企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、外国子会社の所得を親会社で課税するという点で類似する外国子会社合算税制の見直しが行われます。具体的には、特定外国関係会社の適用免除要件である合算対象を判定する租税負担割合(トリガー税率)を30%から27%へ引下げる措置や、外国関係会社関する書類の添付義務の緩和等の措置が講ぜられます。適用時期は、2024年4月1日以降に開始する事業年度とされています。

おわりに

グローバル化が急速に進む中、国際税務の知識は今や多くの企業で必要とされています。BEPS2.0に対応するため、今後日本を含めた世界各国で、国際課税制度は大きく変動することが予想されます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

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障害者雇用に関する法改正等について

昨年12月の臨時国会において、障害者総合支援法や障害者雇用促進法等の改正案が可決成立しました。また、今年1月18日に開催された労働政策審議会においては、障害者の法定雇用率の段階的な引き上げも決定されたところです。今回は、これらの改正等のうち、企業に影響がある部分についてお伝えします。

1.概要

企業に影響のある法改正等については以下の通りです。

  • 短時間労働者に対する雇用率算定方法の変更
  • 障害者雇用調整金の見直しと助成金の創設
  • 法定雇用率の段階的引き上げ

2.短時間労働者に対する雇用率算定方法の変更(令和6年4月1日から)

これまで、障害者の雇用率の算定にあたっては、週所定労働時間が20時間以上の労働者でなければ含まれませんでした。しかし、長時間勤務が難しい障害者の方も多く、週所定労働時間20時間未満での雇用を希望する方も少なくはありません。

今回の法改正では、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障碍者に対して、就労機会の拡大のため、雇用率の算定に含めることができるようになります。これらの方は特定短時間労働者として、1人あたり0.5人として算定可能となる見込みです。障害者雇用調整金や納付金の算定にあたっても、同様の取り扱いとなります。

また、上記改正によって、週所定労働時間10時間以上20時間未満を雇用する事業主に対して支給されていた特例給付金は廃止となります。

3.障害者雇用調整金の見直しと助成金制度の拡充

一定数以上の障害者を雇用する事業主に対しては、障害者雇用の数に応じて障害者雇用調整金が支給されています。今後は障害者の雇用数で評価する障害者雇用調整金等における支給方法を見直し、企業が実施する障害者の職場定着等の取組に対する助成措置を強化することとされています。

4.障害者雇用の法定雇用率の引き上げ

事業主は、従業員数に占める障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。現在、民間企業の法定雇用率は2.3%ですが、令和6年4月に2.5%、令和8年7月には2.7%にまで引き上げられる予定です。人数にすると、現在は44人以上の従業員を雇用している場合に障害者1名以上の雇用義務が生じるところ、令和6年には40人以上、令和8年には38人以上の事業主についても雇用義務が生じることになります。

5.おわりに

厚生労働省の調査によると、雇用される障害者の数は年々増加しており、昨年は61万人を超えています。一方、法定雇用率を達成している企業は48.3%にとどまっており、うまく障害者の活用ができていない企業も少なくありません。
障害者雇用への取り組みは、多様な人材を活用できる組織作りにも繋がっていきます。上述の通り、週所定労働時間10時間~20時間の短時間労働者も雇用率の算定に含まれるようになります。まだ障害者雇用を実施していないのであれば、まずは週10時間でも良いので障害者雇用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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はじめに

2023年2月17日、報道で政府は日本で働く外国人の高度人材を増やす新たな受入れ策と、世界上位の大学卒業者の日本企業への収束の促進のために在留資格「特定活動」に「未来創造人材」という枠を設けることを決定しました。今回はこの2つの施策に関する説明をさせていただきます。

高度専門職について

海外の高度人材を受け入れるための法務省の施策は段階的に行われてきました。まずは在留資格「特定活動」で当該人材を受け入れ始め、さらに高度の専門的な能力を有する外国人材の受入れを促進するため、平成24年5月から「高度専門職」という新たな在留資格を創設し、学歴や年収などの項目について一定のポイントを付与し、法務省が設定したポイント計算表において70ポイント以上を獲得した人材について様々な優遇措置を設けることにより受入れを促進することを狙いとして現在に至っております。

「高度専門職」創設から11年が経過しようとしておりますが、予測されたほど高度人材の確保は芳しくなく、他国の先進国と比べても日本の国際人材獲得は劣っており、経済協力開発機構(OECD)のランキングでは25位となっております。

今回の改正では主に年収にスポットを当てているようです。例えば修士かつ年収2000万円以上の方の場合、これのみのポイントを高度専門職1号ロのポイント計算表で見れば現行は60ポイントとなり高度専門職を取得することができませんが、改正後はこれが可能となります。また経営者においては職歴5年以上と年収4000万円以上で高度専門職が付与されることとなります。

また永住権についても緩和され、現在は80ポイント以上であれば1年、70ポイント以上であれば3年で永住権申請が可能となるところ、先にあげた2つの例であれば1年で永住権申請が可能になるとのことです。

未来創造人材について

もう1つの改正が世界上位の大学卒業者の日本企業への就職促進のために設けられた特定活動「未来創造人材」というものです。本来、就職活動の目的で日本で活動を行うためには「短期滞在」という在留資格で入国し、付与される期間は原則90日となります。しかし、英国や中国の機関が出す3種類の大学ランキングのうち2つ以上で上位100位以内に入る大学を卒業してから5年以内の人を対象に滞在期間を2年に延ばし、その間「短期滞在」では認められていない日本での就労の機会を用意するとしています。

おわりに

未来創造人材について高度外国人材が日本への入国を検討し、また企業も高度外国人材をみつける良いきっかけになることでしょう。

有期労働契約で締結した後、双方の意見の相違や入社前と入社後の認識のずれなどにより契約を終結させることも可能ですし、また双方合意のもと無期に転換させることもできます。外国人材にとって2年もあれば複数企業も体験することができるでしょう。このような法改正に企業担当者が時間を割くことはコストがかかりあまりメリットがないように感じます。もし疑問等があれば是非一度弊社にご相談いただければ幸いです。