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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年5月号

2023年5月8日

グループ通算制度・労働条件明示のルール変更・一般社団法人・特別高度人材と未来創造人材について

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「グループ通算制度」、労務より「労働条件明示のルール変更」、行政書士法人より「特別高度人材と未来創造人材について」について取り上げます。

税理士法人にて取り上げるグループ通算制度は令和2年度税制改正にて連結納税制度が見直される形で移行される制度です。連結納税制度と比較して、損益通算や繰越欠損金の通算をはじめ、様々な論点で特有の扱いがなされるようになります。従来と何が異なり、どのように対応すればよいかの確認が必須となります。また、労務で取り上げる労働条件明示のルール変更、行政書士法人で取り上げる新たな在留資格についても、従来との違いを押さえる必要がある論点が多くなっております。是非今月のNews Letterをご活用ください。

 

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はじめに

令和2年度税制改正により、連結納税制度が見直され、グループ通算制度への移行が決定されました。グループ通算制度は、2022年4月1日以降開始事業年度から適用されることから、3月決算の会社を中心に当制度適用後最初の決算及び申告を迎えています。今回は、グループ通算制度の重要ポイントや留意点を今一度確認していきたいと思います。

損益通算

連結納税制度では、親法人が申告を行う一体申告方式であったため、連結所得金額を計算する過程で、所得法人の所得金額と欠損法人の欠損金額が自動的に通算されていました。グループ通算制度では、親法人及び各子法人が各々申告を行う個別申告方式であるため、①通算グループ内の欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の通算前所得金額の合計額を限度)を、所得法人の所得金額の比で配分し、所得法人において損金算入すると共に、②損金算入された金額の合計額を、欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入することで損益通算が行われます(計算例として、通算制度の当初申告における損益通算の計算(国税庁)を参照)。

繰越欠損金の通算

連結納税制度と同様に、欠損金は特定欠損金と非特定欠損金に分けられ、特定欠損金は自社の所得を限度として使用可能な欠損金、非特定欠損金は通算グループ全体で使用可能な欠損金です。特定欠損金は、グループ通算制度開始前又は加入前に生じた繰越欠損金等であり、非特定欠損金は、グループ通算制度開始後又は加入後に生じた繰越欠損金等と言えます。連結納税制度からグループ通算制度に移行した場合は、特定連結欠損金個別帰属額は特定欠損金へ、非特定連結欠損金個別帰属額は非特定欠損金へ引き継がれます。繰越欠損金は、当事業年度開始日前10年以内に開始した親法人事業年度に対応する事業年度に発生した繰越欠損金について、発生年度の古い順に、また特定欠損金→非特定欠損金の順に控除計算を行います(計算例として、通算法人の過年度の欠損金額の当初申告における損金算入額の計算方法(国税庁)を参照)。

その他の論点

グループ通算制度適用にあたって特有の取扱いがなされる主な項目を以下に列挙します。

  1. 中小法人等の判定(通算グループ内の全社が中小法人等に該当する場合に限定)
  2. 受取配当等の益金不算入の負債利子控除
  3. 外国子会社配当等の益金不算入
  4. 寄付金
  5. 交際費
  6. 中小法人の軽減税率適用範囲
  7. 所得税額控除
  8. 外国税額控除(通算グループ全体での計算)
  9. 試験研究費の税額控除(通算グループ全体での計算)

おわりに

個別申告方式を採るグループ通算制度ですが、損益通算や欠損金の通算の他にも、通算グループ全体での計算や判断が必要な項目も多く、グループ内での情報共有が極めて重要となります。連結納税制度との違いも含め、ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

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令和6年4月から労働条件明示のルールが変わります

労働基準法施行規則等の改正により、令和6年4月1日から労働条件明示のルールが変わります。今回は法改正に対応するため、雇用契約書や労働条件通知書を見直しが必要なポイントをお伝えします。

変更内容の概要

労働契約の締結または更新のとき、労働条件として明示するべき事項が新たに追加されました。変更内容は以下の通りです。

明示のタイミング新しく明示が必要となる事項
すべての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時①就業場所・業務の変更の範囲
有期労働契約の締結時と更新時②更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容
無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時③無期転換申込機会
④無期転換後の労働条件

就業場所・業務の変更の範囲

すべての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、就業場所や業務内容の変更の範囲について明示が必要になります。変更の範囲を明示するとは、配置転換などにより就業場所や業務内容が変更される範囲を明示することを言います。

たとえば、将来的に転勤する可能性があるのなら、就業場所の「変更の範囲」として転勤する範囲を明示しておく必要があります。

更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容

有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限の有無と内容についての明示が必要になります。

以下の場合には、更新上限を新たに設ける、または短縮する理由をあらかじめ説明することが必要です。

  • 最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合
  • 最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合

無期転換申込機会・無期転換後の労働条件の明示

無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨の明示及び無期転換後の労働条件についての明示が必要になります。無期転換をせずに有期労働契約を更新する場合には、更新のたびにこれらの明示が必要になります。

また、無期転換後の労働条件を決定するにあたって、正社員等とのバランスを考慮した事項について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなります。

おわりに

本件についての詳細は、厚生労働省のWebページをご覧ください。モデル労働条件通知書の改正イメージなども掲載されています。

令和4年労働政策審議会労働条件分科会報告を踏まえた労働契約法制の見直しについて(無期転換ルール及び労働契約関係の明確化) (mhlw.go.jp)

 

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はじめに

2023年2月17日、報道で政府は日本で働く外国人の高度人材を増やす新たな受入れ策と、世界上位の大学卒業者の日本企業への収束の促進のために特別高度人材(J-Skip)と未来創造人材(J-Trip)について新たな枠組みを設けることを決定いたしました。2023年4月21日にJ-skipについて詳細が出入国在留管理庁のHPに発表されましたのでご報告させていただきます。

高度専門職の概要

元来、高度専門職はポイント制により70ポイント以上加算される方を対象に優遇措置が与えられるものでした。J-Skipにおいてはポイント計算を使用しません。要件と優遇措置については以下の通りです。

【要件】

①高度学術研究活動(大学教授や研究者等)及び高度専門・技術活動(企業で働く技術者等)

  • 修士号以上取得、年収2000万円以上の者
  • 職歴10年以上、年収2000万円以上の者

②高度経営・管理活動(企業の経営者等)

  • 職歴5年以上であり、年収4000万円以上の者

 【優遇措置】

①世帯年収が3000万円以上の場合、外国人家事使用人2人まで雇用可能(家庭事情等の要件を課さない)。

②従来からの高度専門職の優遇措置である、配偶者の就労の活動範囲が拡大(従来の活動に加え「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」および「技能」に該当する活動についても可能になりました)。

③出入国時に大規模空港等に設置されているプライオリティーレーンの使用が可能。

上記の他に、1年で永住申請にトライできることも優遇措置の1つといえます。修士課程卒業、年収2000万円であれば高度専門職1号ロのポイント計算表を用いた場合、65ポイントであり、元来の高度専門職の要件を満たさないばかりでなく、80ポイント未満であった場合は永住までの申請期間は3年とされているからです。

申請手続き

例えば日本で行う活動が高度専門・技術活動(企業で働く技術者等)の場合、使用する申請書は高度専門職1号ロのものです。ただし、ポイント計算表を利用しないので添付する必要はありません。

添付するものは学歴・職歴に関して学位証明書や在職証明書などの疎明資料と年収についての資料です。年収は過去の年収ではなく、今後1年の予定年収とされております。その他については各カテゴリーに応じて当該在留資格に必要とされている資料を添付して申請をすることとなります。

おわりに

J-Skipは従来の高度専門職1号(イ、ロ、ハ)とも違うものですのでメリット、デメリットを見極めた上での申請が必要になります。もし疑問等があれば是非一度弊社にご相談いただければ幸いです。