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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年11月号

2023年11月1日

J-CAP制度の概要・年収の壁問題への対応・在留期間更新許可申請に係る留意点

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「J-CAP制度の概要」、労務より「年収の壁問題への対応」、行政書士法人より「在留期間更新許可申請に係る留意点」について取り上げます。

労務からお伝えする年収の壁問題は、いわゆる「106万円の壁」と「130万円の壁」についての論点です。諸要件はコラム本文をご覧頂ければと存じますが、この壁を超えると社会保険への加入が必要になり、被扶養者から外れてしまいます。結果、手取り収入が減少するため、労働時間調整がなされたり、時給を上げるとかえって労働者が減ったりと、人手不足の遠因として問題になっています。今月のコラムでは、年収の壁問題の概要と、対策として、厚生労働省が打ち出した対応・支援強化パッケージについてまとめています。多くの企業に関係するものですので、今回のニュースレターを是非お役立てください。

 

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はじめに

東京国税局は、2023年10月より、税務に関するコーポレートガバナンス(税務CG *1)の充実に向けた取組の一環として、「新規性の高い形態の取引等に関する個別確認プログラム(J-CAP制度(Compliance Assurance Program of Japan))」を開始しました。今回はJ-CAP制度の導入背景、概要、及び期待される効果について見ていきたいと思います。

 *1 税務CGとは、税務について経営責任者等が自ら適正申告の確保に積極的に関与し、必要な内部統制を整備すること

J-CAP制度の導入背景

従前より、大企業においては、税務CGの取組を行ってきたこと等もあり、税務に関する企業内のガバナンスを向上させるなど、自発的なコンプライアンスが維持・向上してきています。一方で、こうした大企業では、変化を続けるグローバルなビジネス環境の中で、新規性の高い形態の取引(例えば、日本と馴染みのない新興国・途上国等への進出、技術革新等により生まれた新規事業への参入、法改正や規制強化等により生じる新規取引や商流変更、ビジネスリストラクチャリング等)を行うことが多くなっています。

こうした取引において、税法の適用関係が必ずしも明確になっていないこと等もあり、税務リスク(税務調査で指摘を受ける等の可能性)を国税当局の関与なしで事前に排除・低下させていくことは、税務コンプライアンスが高い法人であっても、難しい場合があると考えられます。それゆえ、このような取引に関する税務リスク低減のための取組として、J-CAP制度が試行されることとなりました。

J-CAP制度の概要

J-CAP制度の概要は、以下の通りです。

対象会社東京国税局調査第一部特別国税調査官が所掌する法人
(資本金が40億円以上の大企業であり、東京国税局管内で300社程度)
対象取引下記要件等を満たすもので、新たな税務上の解釈が必要となる取引や過去に例のない取引など新規性の高い形態の取引で、個別性の高いもの。

  • 国税(法人税、消費税及び地方消費税)の解釈・適用その他の税務上の取扱いに関するもの
  • 申告期限前の申出であること
  • 実際に行われた取引又は将来行う予定の取引で個別具体的な資料提出が可能なもので自身の課税関係に係るもの
対象外の場合
  • 実地確認や取引関係者等による事前関係の認定を必要とする場合(同族会社の行為又は計算否認等の認定を必要とするものを含む)
  • 事実関係の確認や書類の提出に速やかに応じないなど、早期回答に協力的でない場合
  • 個々の財産の評価や取引等価額の算定に関するもの
  • 税務CGの趣旨に沿わない場合(例えば、内容がタックスプランニングに関わるコンサルタント的な対応を求められる場合など)
回答までの期間原則として、申出から45開庁日以内
税務CGの評価申出内容等を踏まえ、利用した企業の税務CGの評価へ反映予定。
但し、制度の利用件数が多い企業の評価が高くなり、制度利用がない企業の評価が低くなるというものではなく、あくまで企業が適正申告の確保に対し積極的に取り組んでいると評価できるか否かの観点から反映。

 

期待される効果

J-CAP制度に期待される効果は、企業側と国税当局側の双方にあるといえます。企業側においては、J-CAP制度の導入背景にも述べた通り、税務CGの充実を図り、新規性の高い形態の取引における税務リスクを低減させることが期待されます。また、国税当局側においては、より調査必要度の高い法人に対し、調査事務量を配分することが可能となるといった効果が期待されます。

おわりに

今回取り上げたJ-CAP制度は一部の大企業向けの取組といえますが、税務CGの充実を図ることは、全ての企業にとって税務リスクを低減することに繋がります。税務CGへの取組等に関して、ご相談等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

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「年収の壁」問題への当面の対応・支援強化パッケージが発表されました

労働者が社会保険料の発生に伴う手取り収入減少を避けるため、労働時間を減らすなどの調整を行うことがあり、いわゆる「年収の壁」として問題となっております。これに対応するため、厚生労働省は「年収の壁・支援強化パッケージ」(年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省 (mhlw.go.jp))を発表しました。

1.「年収の壁」問題の概要

社会保険に関しては「106万円の壁」と「130万円の壁」が問題となっています。

(1)106万円の壁
106万円の壁とは、短時間労働者に対する社会保険制度の適用拡大により生まれたものです。現在、以下の条件を満たす短時間労働者は社会保険への加入が必要となり、社会保険料負担が発生します。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 雇用期間が継続して2ヵ月を超えて見込まれる
  • 賃金の月額が8.8万円以上
  • 学生ではない(夜間の学生などは対象)
  • 被保険者の総数が企業規模で常時101人以上※の特定適用事業所に勤務(または任意特定適用事業所に勤務)※令和6年10月からは51人以上

月額8.8万円×12か月が105.6万円になるため、106万円の壁と言われています。

(2)130万円の壁
130万円の壁とは、社会保険の被扶養者となる要件に係るものです。年収130万円を超えて働く場合は被扶養者となることはできず、国民健康保険や国民年金への加入などが必要となり、社会保険料の負担が発生します。

2.「106万円の壁」への対応

(1)キャリアアップ助成金の新コース(社会保険適用時処遇改善コース)の新設
短時間労働者が新たに被保険者となる際に、労働者の収入を増加させる取組みを行った事業主に対して、一定期間の助成(労働者1人当たり最大50万円)を行うための助成金制度が創設されました。助成の対象となる取組みは、賃上げや所定労働時間の延長のほか、保険料負担に伴う手取り収入の減少分に相当する手当(社会保険適用促進手当)の支給も含まれます。詳細については、下記Webページをご覧ください。

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

(2)社会保険適用促進手当の標準報酬算定からの除外
事業主は、新たに社会保険の被保険者となる労働者に対し、社会保険料負担を軽減するために「社会保険適用促進手当」を支給することができます。標準報酬月額が10.4万円以下の者に対する社会保険適用促進手当については、労働者負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、標準報酬月額・標準賞与額の算定には含まれないものとされています。

3.「130万円の壁」への対応

直近の年間収入が、被扶養者の認定の要件である130万円を超える見込みとなった場合であっても、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等に加えて、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、直ちに被扶養者認定を取り消されることはなく、総合的に将来収入の見込み額から判断し、迅速な認定を受けることができるようになりました。一時的な収入変動により年間130万円を超える見込みとなった場合のものであって、恒常的な収入増加については適用できませんのでご注意ください。

4.配偶者手当への対応

配偶者の収入増加により配偶者手当が支給されなくなることを避けるために就業調整をする場合があります。これに対応するため、厚生労働省は配偶者手当の見直しのためのフローチャートの作成や、各地域でのセミナー開催を予定しています。

 

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はじめに

過日、東京出入国在留管理局で在留期間更新許可申請をした際に窓口カウンターで配布された書類がありました。1つは銀行口座についての注意点。また窓口申請をした際に申請受付票の裏面の注意書きが変更されており、マイナンバーに関する事項が追加されていました。今回はこの2点について注意喚起をさせて頂ければと存じます。

銀行口座について

配布された書類には「銀行口座(キャッシ ュカード・通帳)を他の人にあげたり売ったりすることは犯罪です。絶対にしないでください。」という注意喚起と共に赤枠で「住所、在留期限や在留資格、仕事先などの情報に変更があった場合は、口座を作った銀行にすぐに連絡してください。」と日本語の他、複数の言語で記載がありました。

銀行に連絡しなかった場合、具体的にはど のような問題が生じるのでしょうか。実例としては在留期間更新許可申請中、特例期間に入った場合にこれを届出しなかったためサービスの全部又は一部が停止され、給与の支払いに支障が出たケースがあります。

特例期間とは例をあげて簡潔に説明すると在留期限満了日前に在留期間更新許可申請をした場合、在留期間満了日を経過してもなお、審査が終了しない場合は在留期間満了日から2カ月間は適法に在留することができるとい うものです。

マイナンバーカードについて

申請受付票の裏面にはマイナンバーカードを持っている方むけに注意書きが追加されていました。「マイナンバーカードは有効期限が切れた時に失効します。再びマイナンバーカードが必要な方は、有料再交付(1,000円)となります。マイナンバーカードの有効期限が経過するまでに、お住いの市区町村の窓口で手続きを行ってください。」とあり、詳細を記載した出入国在留管理庁のHPのQRコー ドが記載されています。こちらも特例期間に入った場合は市区町村役場へ別途手続きが必 要なようです。詳細はご自身の住所地を管轄する市区町村役場で確認してください。特例期間に入った届出を怠り、再交付となった場合は別途1,000円の手数料が発生する恐れが あります。

在留期限管理サービス

前述の銀行口座、マイナンバーカードの問 題を解決するためには在留期間更新許可申請等が許される在留期限3か月前から申請をす ることにより、在留期限満了日前までに手続きを完了させることが望ましいです。

弊社ではこのような問題が起こる前から失 念により在留期限が経過して不法就労状態になることを防止する目的で在留期限管理サービスを行ってまいりました。外国人の従業員の在留期限を管理し、在留期間満了日4か月前に更新申請をすべきか否かを企業様へリマインドし、回答によって申請手続きをサービ スです。

今ではこのサービスが前述の銀行口座やマ イナンバーカードの問題を解決する効果も持つことになりました。顧問サービスなどと連 携することも可能で外国人従業員に関するイミグレーションマターの外注を望む企業様は是非一度お問合せ下さい。