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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年12月号

2023年12月1日

電子取引のデータ保存義務化・裁量労働制への改正対応・株主総会におけるみなし決議

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今年最後となるニュースレターでは、税務より「電子取引のデータ保存義務化」、労務より「裁量労働制への改正対応」、司法書士法人より「株主総会におけるみなし決議」について取り上げます。

税務にて取り扱う電子取引のデータ保存義務化については、電子帳簿保存法に絡み、宥恕措置によって延期されてきた義務化がついに実施されるというものです。今や電子取引に該当する取引を全く行っていない企業は少ないかと思いますので、改めて要件や社内の対応状況について確認する必要があるでしょう。

また労務で取り上げる裁量労働制に関する論点も、裁量労働制を導入している企業については、必ず対応しなければならない事項がございますので、本ニュースレターをご参照ください。

いずれの論点も、多くの会社に関係する論点となっておりますので、是非ご確認ください。

本年も一か月を切りました。皆さまにおかれましては、本年も格別のご高配を賜り、RSM汐留パートナーズ一同、心よりお礼申し上げます。ご多忙の中かと存じますが、ご自愛をお忘れなく、よいお年をお迎えください。

 

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はじめに

2024年1月より、電子帳簿保存法における電子取引のデータ保存の義務化が全面的にスタートします。正確には電子データをプリントアウトして紙面にて保存することを認めていた2年間の宥恕期間が2023年12月をもって終了します。今回は電子帳簿保存法について、2024年1月から変更となる点や必要な対応について、今一度見ていきたいと思います。

電子帳簿保存法の概要

電子帳簿等保存法とは、税法上原則紙での保存が義務づけられている国税関係帳簿や、決算関係書類や領収書・請求書などの国税関係書類ついて、一定の要件を満たした上で電子データによる保存を可能とすること及び電子取引情報の保存義務等を定めた法律です。

電子帳簿保存法上、電子データでの保存は以下の3種類に区分されています。

電子帳簿等保存電子データで作成した帳簿・書類を電子データのまま保存
スキャナ保存紙で受領・作成した書類を画像データで保存
電子取引電子データで授受した取引情報を電子データのまま保存

2023年税制改正(2024年1月以降適用)

  1. 「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」の対象帳簿の範囲が合理化、明確化されました。
  2. スキャナ保存制度の要件が緩和され、解像度・階調・大きさに関する情報の保存や入力者等情報の確認要件が不要となり、帳簿との相互関連性の確保が必要な書類が「重要書類(契約書・領収書・送り状・納品書等のように、資金や物の流れに直結・連動する書類)」に限定されることとなりました。
  3. 電子取引のデータ保存については、システム対応が間に合わなかったことにつき相当の理由がある事業者等に対する新たな猶予措置を講じ、a)取引年月日その他の日付、b)取引金額、c)取引先にてデータ検索を可能とする「検索機能の確保」について、税務職員の質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は、2課税年度前の売上高が5,000万円以下の対象者、又は電子取引のデータを出力し取引年月日等及び取引先ごとに整理して保存している場合は不要とされました。

電子取引に関して必要な具体的な対応

2024年1月以降は、電子取引に関しては、原則として以下のいずれかの対応が必要となります(重複対応可)。

  1. 書類の発行者にタイムスタンプを付与してもらう(発行側)
  2. 規則期間(最長2ヵ月+7営業日以内)にタイムスタンプの付与を行う(受領側)
  3. データの訂正・削除の履歴が残る又は訂正・削除が不能なシステムで保管する
  4. 訂正削除防止のための事務処理規程を策定し、業務運用を行う

おわりに

デジタル化が進む経済社会において、電子データによる必要書類の保存は、アクセスと検索の容易さ、保存スペースの削減、データの整合性確保とセキュリティ強化など、様々な面でメリットをもたらします。また10月より開始されたインボイス制度におけるインボイス保存の場面でも電子データでの保存は役立ちます。電子化への対応が難しい場合や各種ご相談等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

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令和6年3月末までに裁量労働制の改正対応が必要です

令和6年4月から裁量労働制の省令・告示の改正があります。継続して裁量労働制を適用していくためには、令和6年3月末までに、改正に対応した労使協定等の締結と、労働基準監督署への届出が必要となります。

対応が必要なこと

専門業務型・企画業務型のいずれにおいても、新たな労使協定、労使委員会の決議、労使委員会の運営規程の改定などが必要になります。

①労働者の同意を得る、同意の撤回の手続きを定める

  • 本人同意を得ることや、同意を得なかった場合に不利益取扱いをしないことを労使協定に定める(専門業務型裁量労働制)
  • 同意の撤回の手続と、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使協定・労使委員会の決議に定める(専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制)労使委員会に賃金・評価制度を説明する(企画業務型裁量労働制)

②労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う(企画業務型裁量労働制)

③労使委員会は6ヶ月以内ごとに1回開催する(企画業務型裁量労働制)

④定期報告の頻度は、初回は6カ月以内に1回、その後1年以内ごとに1回(企画業務型裁量労働制)

また、労働基準監督署への届出も必要です。改正に伴って様式が変わっていますので、ご注意ください。制度の具体的な内容や、新しい様式については、下記ページのパンフレットをご参考にしてください。

裁量労働制の概要 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

労使協定や労使委員会の決議で定めるべき事項

労使協定や労使委員会の決議で定めるべき事項は以下の通りとなります(下線部分が今回の制度改正による追加事項です)。

専門業務型裁量労働制の労使協定企画業務型裁量労働時間制
  1. 制度の対象とする業務
  2. 労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
  3. 対象業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が対象労働者に具体的な指示をしないこと
  4. 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置
  5. 対象労働者からの苦情の処理のため実施する措置
  6. 制度の適用に当たって労働者本人の同意を得ること
  7. 制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
  8. 制度の適用に関する同意の撤回の手続
  9. 労使協定の有効期間
  10. 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中及びその期間満了後5年間(当面の間は3年間)保存すること
  1. 制度の対象とする業務
  2. 対象労働者の範囲
  3. 労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
  4. 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置
  5. 対象労働者からの苦情の処理のため実施する措置
  6. 制度の適用に当たって労働者本人の同意を得ること
  7. 制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
  8. 制度の適用に関する同意の撤回の手続
  9. 対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
  10. 労使委員会の決議の有効期間
  11. 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中及びその期間満了後5年間(当面の間は3年間)保存すること

おわりに

今回の改正については、対象労働者からの同意取得など、対応にそれなりの時間を要します。3月末までに対応を完了させる必要がありますので、早めに労使協定等の改定や労働者からの同意取得等に着手するようにしましょう。

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はじめに

株式会社において、株主総会は会社法に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項(取締役会設置会社においては、株主総会は会社法に規定する事項及び定款で定めた事項)について決議をすることができます。株主総会は株主へ招集通知を発し、会議体として開催して決議を行う方法の他に、議決権を行使することができる株主(以下単に「株主」といいます)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をすることにより、当該議案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすことができます(以下「みなし決議」といいます)。

株主全員の同意が得られる場合に有用

株主が少数である株式会社において、全員の同意が得られることが予め分かっているような状況においては、みなし決議は株主総会の手間を大きく減らすことができるので有用です。一方で、1名でも反対する株主や連絡の取れない株主がいるとみなし決議を利用することはできません。

定款の定めは不要

定款にみなし決議を行うことができる旨の定めがなくても、みなし決議を行うことができます。

取締役会の決議(取締役の決定)

株主総会を招集するときは、取締役は株主総会の日時・場所・目的である事項等を定める必要があります。みなし決議を行う場合、「株主総会を招集するとき」に該当はしませんが、取締役会の決議(取締役の決定)によって提案すること及びその提案内容を承認しているケースが多いでしょうか。

株主による提案も可能

取締役だけではなく、株主によるみなし決議に関する提案も可能です。取締役の関与を経ずに株主だけでみなし決議を行うことができるため、取締役と連絡が取れなくなったようなケースでは特に有用です。

通知から同意までの期間の定めはない

株主総会を開催する場合、招集を発してから開催するまでの期間が会社法で定められています。一方で、みなし決議にはそのような期間がないため、提案日=同意日=みなし決議日とすることも可能です。

書面又は電磁的記録による同意

みなし決議に関する株主の同意は口頭によるものでは足りず、書面又は電磁的記録による同意が必要です。

議決権のない株主の同意は不要

みなし決議を行うには、「提案する株主総会の目的事項について議決権を行使することができない株主」の同意は不要です。その典型例は「無議決権株式に係る株主」です。

種類株主総会も決議可能

みなし決議は株主総会だけではなく、種類株主総会においても利用することが可能です。

株主総会の決議日

みなし決議による株主総会の決議日は、株主全員から同意を得られた日です。特定の日を決議日としたい場合は、●日までに同意を得られることを条件に■日に決議があったものとみなす旨を提案内容とすることも可能とされています。なお、■日を●日より前の日とすることはできません。また、株主1名(一例として代表取締役たる株主)の同意日を決議日としたい日にする等の方法もあります。

株主総会の記載事項

みなし決議を行ったときも株主総会議事録の作成は必須であり、その株主総会の記載事項は次のとおりです。

①株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容
②上記①の事項の提案をした者の氏名又は名称
③株主総会の決議があったものとみなされた日
④議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名