汐留パートナーズ・ニュースレター 2019年06月号

はじめに

2018年3月30日に、企業会計基準委員会(ASBJ)は、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、収益認識基準等)を公表しました。これらは2018年4月1日より任意適用、2021年4月1日より強制適用となります。収益は会社の経営及び業績管理上、重要な指標であり、この収益認識基準等は基本的にすべての企業に重要な影響を及ぼすことが予想されます。今回は適用時期が迫りつつある収益認識基準の概要を見ていきたいと思います。

公表経緯

日本において、従来、収益認識については企業会計原則の「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」と記載されているのみで、包括的な会計基準はありませんでした。一方、IASB及びFASBは共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発に取り組み、2014年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表しました。これを受け、日本でも国際間の財務諸表の比較可能性を高める意味で、このような国際的な動向に追随し、収益認識基準等の公表に至りました。

適用範囲

収益認識基準は、金融商品に係る取引やリース取引等を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に対して、「企業会計原則」に優先して適用されます。

適用会社

収益認識基準には、適用会社の定めはなく、適用するか否かは、金融商品取引法や会社法の規定によることになります。即ち、監査を受ける法人以外の中小企業には強制適用されないものといえます。しかし、新基準と旧基準の選択肢があるとしても、継続適用が前提にあり、今後の目指すべき方向としては新基準を適用していくべきと考えられるでしょう。

基本原則(5ステップ)

収益認識基準の基本原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益認識することにあります。また当該原則に従うべく、①顧客との契約を識別、②契約における履行義務を識別、③取引価格を算定、④契約における履行義務に取引価格を配分、⑤履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識といった5つのステップを示しています。

おわりに

収益認識基準等の内容は膨大かつ難解なものとなっており、その準備には相当の時間と工程を要することが予想されます。よって自社に関連する論点をピックアップし、早期に検討に着手する必要があります。今回は収益認識基準の概要説明に留まりましたが、具体的な取扱い等、ご不明点がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

新卒採用者の3年以内の離職率、平成30年は31.8%

◆ゴールデンウィーク明けは早期離職の時期?

例年、5月の大型連休後は、新社会人など若手が新しい環境に適応できずうつ病のようになってしまう、いわゆる「5月病」の時期とされています。特に今年は、10日間もの連休となったため、「早期離職を考える人」「大型連休中に転職活動をした人」が例年よりも多い傾向にあったとする一部報道も見られました。
ここでは、新卒入社3年以内の早期離職についてとりあげます。

◆平成30年間の「3年以内の離職率」推移

厚生労働省が毎年公表している「新規学卒者の離職状況」によると、新規学卒就職者(本稿では大卒のみ。以下「新卒採用者」)の3年以内の離職率は、平成30年で31.8%でした。離職率を平成の30年間で比較すると、最も低い年で23.7%(平成4年)、最も高い年で36.6%(平成16年)となっており、年によって多少の変動はあるものの、昨年の31.8%という結果は平均値に近いものとなっています。いつの時代も、おおむね3~4人に1人の新卒採用者が、3年以内に辞めてしまうと言えます。
ちなみに、業種別では、離職率が高い順に、宿泊業・飲食サービス業(49.7%)、教育・学習支援業(46.2%)、生活関連サービス業(45.0%)という結果でした。

◆「3年以内の離職」の理由1位とは?

では、新卒採用者は、具体的にどのような理由で早期離職しているのでしょうか。
内閣府「平成30年版 子供・若者白書」によれば、初職の離職理由(複数選択可)として最も多く挙げられたのは「仕事が自分に合わなかったため」(43.4%)で、2位以下の「人間関係がよくなかったため」(23.7%)、「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」(23.4%)を大きく引き離す結果となりました。新卒採用者の場合、人間関係のトラブルや労働条件よりも、「仕事(業務)のミスマッチ」が原因で辞めてしまうケースが多いようです。
この時期、自社の新卒採用者においても「仕事が自分に合わない」と感じている者がいないかどうか目を配ってみると、離職の予防につながるかもしれません。

【厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)」】

【内閣府「平成30年版 子供・若者白書」】

Q 休職期間満了の従業員を解雇したい

当社には、病気のため休職している従業員がいます。この度、当該従業員が休職期間満了により復職するのですが、当該従業員は、復職して休職前の業務に従事するのでは体調的に厳しく、より軽易な業務へ配転のうえでの復職を希望しています。当社としては、このような配転をしてまで当該従業員を雇い続けたくはないのですが、休職期間満了により解雇しても問題はないでしょうか。

A 治癒したといえるか否かがポイント

◆休職とは
休職とは、労働者による労務の提供が不可能または不適当な事由が生じた場合に、労働契約を存続させながら一定期間その労働者の労務の提供義務を免除する措置をいいます。民間の企業については休職について法律による定めはなく、多くの場合、就業規則や労働契約によって規定されています。休職の目的や内容によって、傷病休職、事故休職、起訴休職などがあります。休職期間中の賃金については、企業ごとに異なりますが、傷病休職のように本人都合の休職の場合は賃金が支給されない場合が多いようです。
ご質問のケースでは、病気により休職しているとのことですので、傷病休職を前提とします。

◆休職期間満了後の復職
休職期間が満了した場合、休職事由が消滅すなわち病気が治癒していなければ、自然退職または解雇する旨の定めがおかれているのが一般的です。一方、病気が治癒した場合は、復職することになりますが、どの程度の回復をもって治癒したといえるかが問題となります。
裁判例を見ますと、治癒したと言えるためには、原則として従前の職務を通常程度に行えるまで健康状態が回復していることが必要とされています。ただし、職種が限定されておらず、軽易業務に就かせればほどなく従前の職務を通常程度に行えるまで健康状態が回復していれば、使用者としては軽易業務への配転などの配慮を行うべきともされています。
ご質問のケースでは、休職した従業員は軽易業務への配転を希望しており、軽易業務を行うことができるまでには健康状態が回復しているように思われます。そのような場合、会社が上記のように配転の配慮をせずに、直ちに治癒していないとして解雇とすることは無効となる可能性があります。そこで会社としては、解雇をする前に、当該従業員の労働契約において職務を限定しているかどうかや、診断書を取り寄せるなどして当該従業員の正確な健康状態等を慎重に検討する必要があります。