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景井 俊丞 Shunsuke Kagei

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景井 俊丞 Shunsuke Kagei

パートナー  / 申請取次行政書士

在留資格「技術・人文知識・国際業務」の必要要件や申請の論点

2023年1月31日

日本に滞在するための在留資格にはさまざまなものがありますが、日本で就労している外国人が取得している2番目に多い在留資格が「技術・人文知識・国際業務」です。本記事では在留資格「技術・人文知識・国際業務」の詳細について詳しく説明するとともに、申請の仕方などについても紹介いたします。

「技術・人文知識・国際業務」とは?

「技術・人文知識・国際業務」とは、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)で規定されている29種類の在留資格の一つです。 この資格は、大卒等の学歴のある者または一定以上の実務経験を有する外国人が、学校で学んだ専門や実務経験に関連した一定以上の専門性を必要とする業務を行うため、または外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に属する活動を行うために取得できる在留資格です。

2020年12月末時点で、この在留資格をもって約28万人もの外国人が日本に居住しています。19種類ある就労系の在留資格の中では「技能実習」の37万人に次いで多い在留者数となっています。 この「技術・人文知識・国際業務」という在留資格ですが、名称が長くて言いづらく、また覚えづらいこともあり、よく「技人国」(ぎじんこく)と略して呼ばれています。一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。

(1)「技人国」は統合された在留資格

この「技術・人文知識・国際業務」という在留資格は、もともとは「技術」と「人文知識・国際業務」という独立した在留資格でした。それが2014年6月の入管法の一部改正により、「技術・人文知識・国際業務」とういう在留資格に統合され、翌年の2015年4月に施行され今に至っています。在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月の4種類あります。

入管のホームページには、改正入管法の施行にあたり以下のような通知が掲載されています。 「専門的・技術的分野における外国人の受入れに関する企業等のニーズに柔軟に対応するため、業務に必要な知識の区分(理系・文系)に基づく「技術」と「人文知識・国際業務」の区分をなくし、包括的な在留資格「技術・人文知識・国際業務」へと一本化します。 これだけでは法改正の経緯が良くわかりませんので、改正前の「技術」と「人文知識・国際業務」の在留資格について、どのような取り扱いがなされていたのか、その一部を以下のとおり紹介します。

(2)業務内容が理系か文系か

日本人が理系の大学を卒業して総合職のような事務系の業務に就く場合や、その反対に文系の大学を卒業してシステムエンジニアとしての業務に就く場合、何ら支障なく就職できます。これは今も昔も変わりはありません。

ところが、留学生が上記のようなケースで就職のために「留学」から「技術」や「人文知識」の在留資格へ変更申請をしても許可されなかったのです。 入管では、外国人が従事しようとする業務に必要な技術又は知識について、理系か文系に明確に区分していました。事務系の業務であれば文系の大学を卒業していること、また、情報処理関係の業務であれば理系の大学を卒業していることを要件としていたため、一部の留学生は「技術」又は「人文知識・国際業務」の在留資格を取得することができませんでした。

その後、一部の運用が緩和され、文系の大学卒業者であっても情報処理関係の業務に従事する場合は「人文知識・国際業務」の在留資格をもって許可するようになりました。 しかしながら、依然として一部の留学生が在留資格を取得できずに就職できない状況が続いていたため留学生を社員として受け入れたい企業等からの要望もあり法改正がなされました。

(3)在留資格の該当範囲

法改正により統合された「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で行うことのできる活動は、以下のとおり規定されました。 理系と文系が統合されたことが分かります。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動

これにより、申請者は従事しようとする業務が「技術」又は「人文知識・国際業務」に該当する業務であるか迷うことなく、希望する在留資格を「技術・人文知識・国際業務」として申請することが可能となりました。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務と要件について

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で行うことのできる活動については前述1のとおりですが、この在留資格に該当する業務として概ね以下のような業務であれば認められています。

翻訳・通訳、私企業の語学教師、販売・営業、海外業務、技術開発、貿易業務、設計、広報・宣伝、教育、会計業務、デザイナー

「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動として認められる業務の典型的事例については、法務省入国管理局(当時)が2008年3月(2015年3月改訂)に「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」という文書で公表していますのでそちらをご参照下さい。

在留資格への該当性が認められれば、次の要件としては、法務省の基準省令に適合する必要があります。基準省令で規定している基本的事項は以下のとおりです。 尚、従事しようとする業務内容が「技術・人文知識」と「国際業務」のどちらに該当するかにより、要件が異なりますので、注意が必要です。

【基準省令】 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学、人文科学、外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務に従事する活動

(「契約」には、雇用のほか、委任、委託、嘱託等も含まれますが、継続的なものでなければいけません。)

(1)「技術・人文知識」に該当する場合の要件

以下の業務内容に加え、学歴または実務経験の要件いずれかを満たしている必要があります。

① 業務内容 
自然科学または人文科学の分野に属する知識を必要とする業務に従事する活動

② 学歴要件(次のいずれかに該当)
・大学卒業者 業務に関連する科目を専攻し卒業している者であること。大学卒業者には、大学のほか、日本または海外の短期大学、大学院、大学の付属の研究所を卒業している者が含まれます。
*ただし、情報処理の業務に従事しようとする場合で、法務大臣告示で定める情報処理技術に関する資格者は学歴要件を満たす必要はありません。
・専修学校修了者 業務に関連する科目を専攻して日本の専門課程を修了し、「専門士」または「高度専門士」の称号を付与されている者であること。

③ 実務経験 
業務について10年以上の実務経験を有し必要な知識を修得している者であること。
*大学、高等専門学校等において、業務に関連する科目を専攻していた場合は、その期間は実務経験に含めることができます。

単純労働や肉体労働ではなく、自然科学または人文科学分野に属する専門性や知識、技術を必要とする業務に従事する必要があります。そのため、実際に仕事をする場所が工場内や作業場であるような場合は、入管から単純労働と疑われないよう一定の知識や技術を必要とする業務内容であることを立証する必要があります。

規模の大きい会社では、幹部候補生として採用した者を会社の業務を幅広く経験させるために、入社当初に研修として現場での単純労働をさせることもあると思います。このような場合は、キャリアプランと研修計画を作成し、現場での業務は入社直後の短期間に限られること、今後のキャリア形成のためにそのような業務を経験する必要があることを書面で説明することが求められます。

規模の小さい会社の場合、その説明に説得力を持たせることは難しいですが、不可能ではありませんので丁寧な説明を心がけるようにしてください。 この点については、法務省入国管理局 (当時)が2015年12月に策定した文書「ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について」を合わせてご参照下さい。

(2)「国際業務」に該当する場合の要件

以下の業務内容及び実務経験のいずれにも該当していることが必要です。翻訳、通訳、語学の指導に係る業務に従事する者の場合は、実務経験要件を満たしていない場合でも、業務内容及び学歴要件いずれも満たしていれば対象となります。

① 業務内容 
外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に該当すること。具体的には、翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務であること。

② 実務経験 
国際業務に関連する実務経験が3年以上あること。

③ 学歴要件
大学卒業者であること。大学卒業者には、大学のほか、日本または海外の短期大学、大学院、大学の付属の研究所を卒業している者が含まれます。

(3)報酬(給与)に係る要件

「技術」「人文知識」「国際業務」いずれの分野においても、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受ける必要があります。

必要書類について

「技術・人文知識・国際業務」では、提出書類に基づき、会社情報と外国人個人の情報両方が審査されます。いずれかに不備や不明瞭な点があると不許可となるため、それぞれの状況に応じた必要資料を準備の上、申請することが大切です。

尚、以下は必要最低限の資料であり、会社の状況や外国人の経歴、従事する業務などそれぞれのケースにより、下記以外にも提出すべき書類がありますので、ご注意下さい。 また、それぞれの手続きの流れはこちらのページにてご紹介しておりますので、合わせてご参照下さい。

(1)在留資格認定証明書交付申請

在留資格認定証明書交付申請とは、海外在住の外国人を日本に呼び寄せるための手続きです。外国人の採用を決めた会社が地方出入国在留管理官署に申請書類を提出します。無事に在留資格認定証明書の交付を受けたら、それを外国にいる申請人に送ります。申請人は在留資格認定証明書を添付してその国の日本国大使館または日本国総領事館で査証(ビザ)を申請することになります。必要書類は以下のとおりです。

① 在留資格認定証明書交付申請書
② 写真(縦4cm×横3cm)
※申請前3か月以内に正面から撮影された無帽、無背景で鮮明なもの。
③ 返信用封筒(定型封筒に宛先を明記の上、切手(簡易書留用)を貼付したもの)
④ 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるもの
の写し。電子申告の場合は、『メール詳細』を添付)
※上場企業の場合は、四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し)で可。
⑤ 専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士または高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書(1通)
上記に加え、規模の小さい会社の場合は以下のような書類が必要です。
・雇用契約書または労働条件通知書
・申請人の卒業証明書(国によっては発行に数週間~数ヶ月を要する場合があるため、「技術・人文知識・国際業務」を申請予定の場合は、事前に外国人へ卒業証明書が必要な旨を伝えておくことが望ましいでしょう。)
・登記事項証明書
・勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書

直近の年度の決算文書の写し詳細については、法務省のサイトでご確認頂けます。また、必須書類とはされていませんが、採用理由書を作成し、その中で採用の経緯や申請人の職務内容などについて説明するのが一般的です。それに加えて、1日、1週間、1カ月、1年の業務スケジュールや今後のキャリアプランなども提出するとよいでしょう。 提出後に入管から追加書類を求められることもあります。その場合は、指示された書類を期限内に提出するようにしましょう。もし間に合いそうにない場合は、入管にその旨を伝えれば期限を延ばしてもらうことも可能です。審査期間ですが、法務省によれば標準処理期間は1カ月から3カ月となっています。実際の審査期間を見ますと、平均1カ月半から2ヶ月です。ただし、これはあくまでも目安であり、実際にどれだけの期間がかかるかは個別の案件によって変わってきます。実際の審査処理期間については、法務省のサイトで公表されています。

(2)在留資格変更許可申請

在留資格変更許可申請とは、現在すでに日本に住んでいる外国人が、現に有する在留資格の変更を受けようとするときに行う手続きです。
例えば、日本の専門学校や大学を卒業した留学生が会社で働くためには、「留学」という在留資格から「技術・人文知識・国際業務」に変更しなければなりません。4月から社会人になる卒業見込みの留学生の場合、前年の12月頃から在留資格変更許可申請をすることが可能です。必要書類は以下のとおりです。

① 在留資格変更許可申請書
② 写真(縦4cm×横3cm)
③ パスポート及び在留カード(提示)
④ 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
※上場企業の場合は、四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し)で可。
⑤ 専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書上記書類以外は、上述の在留資格認定証明書交付申請の場合と同じです。

変更許可申請については、法務省サイトの各在留資格ページも合わせてご参照ください。尚、法務省が発表している標準処理期間は2週間から1カ月となっていますが、審査期間を見ますと、平均1カ月から1カ月半ほどかかっている実情があります。また、毎年1月から3月にかけては申請が急増するため、この期間よりも更に長い時間がかかっています。ただし、これはあくまでも目安であり、実際にどれだけの期間がかかるかは個別の案件によって変わります。

(3)在留期間更新許可申請

在留期間更新許可申請とは、外国人が現に有する在留資格の活動を在留期間が満了しても継続しようとするときに在留期間を延長するために行う手続きです。 在留期限の3カ月前から申請が可能です。必要書類は以下のとおりです。

① 在留資格変更許可申請書
② 写真(縦4cm×横3cm)
③ パスポート及び在留カード(提示)
④ 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの
写し)
※上場企業の場合は、四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し)で可。
⑤ 申請人の住民税の課税証明書及び納税証明書

尚、申請人が転職している場合には、上述の在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請と同様の書類が必要になります。
更新許可申請について、詳しくは法務省サイトの各在留資格ページも合わせてご参照ください。審査期間については、法務省が発表している標準処理期間は2週間から1カ月となっています。実際の審査期間を見ますと、平均1カ月程度です。ただし、これはあくまでも目安であり、実際にどれだけの期間がかかるかは個別の案件によって変わってきます。

新規入国者数と在留者数について

2014年の入管法改正(2015年施行)により新規入国者数と在留者数にどのような変化があったのか、法務省の統計をもとに作成した下のグラフを使って解説します。 グラフは、2014年から2019年までの新規入国者、資格変更者及び在留者別の年別の推移を表しています。新規入国とは、日本国の大使館や領事館でビザ発給を受け新規に入国した者です。資格変更とは、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」へ在留資格を変更許可された者です。在留者とは、12月末の時点の国内に居住している外国人のことです。

以下のグラフをご覧ください。新規入国者、資格変更者及び在留者のいずれも、2014年法改正以来増加傾向にあります。新規入国者について2014年と2019年を比較すると、5年間で約3倍、在留者については約2倍まで増加しています。 資格変更者も2014年と2018年を比較した場合、約2倍まで増加しています。

以上から、2015年の改正入管法施行以降、新規入国者、在留者とも右肩上がりに増加していることから、法改正による一定の効果はあったものと思われます。

罰則について

初めに書いたとおり「技術・人文知識・国際業務」とは、一定以上の専門知識、技術を必要とする業務を行うための在留資格です。専門性のある仕事をさせると偽って「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を外国人に取得させ、実際には単純労働をさせたような場合、その外国人は不法就労となります。

不法就労した場合、本人が処罰の対象になることはもちろんのこと、雇用した事業主も「不法就労助長罪」に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。 そのため、外国人を雇用する場合は、経歴や従事する業務内容を慎重に検討し、法に抵触することのないよう細心の注意が必要です。

おわりに

本記事では在留資格「技術・人文知識・国際業務」の詳細について紹介いたしました。在留資格については複雑な部分もありますが、しっかりと理解したうえで進めなければ、場合によっては処罰の対象となります。

弊社には行政書士のほか、外国人雇用管理士や外国人雇用管理主任者など、在留資格や外国人の雇用に精通したスタッフが多数在籍しております。在留資格のことでお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

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