日本における駐在員による在留資格「企業内転勤」の取得に必要な要件~出向元在籍歴、業務内容及び報酬~
2023年9月26日
直近1年以上、海外法人(出向元)に在籍
駐在員直近1年以上、継続して海外法人(出向元)に在籍していることが必要です。例えば親会社である海外法人Aに直近1年以上継続して在籍していた駐在員が子会社である日本法人へ出向するケースなどがあげられます。では日本への出向前に日本法人の親会社である海外法人A社に在籍していたものの、A社から在籍出向で別国のB社に勤務していた場合はどのように判断されるのでしょうか?勤務先の視点からみられるのか、それとも在籍先の視点からみられるのか?この場合は在籍の視点からみられており、A社に在籍していることになります。
なぜこのような要件が設けられたかというと、本規定は新たに採用した職員を直ちに日本に転勤させることは認めないという規定であり、労働力を確保しようとする目的だけのために転勤させることを防止する趣旨があります。
海外法人と日本法人の業務内容
駐在員が日本で行う業務にも制限があります。駐在員が日本で行う業務は日本の就労系の在留資格の代表格である「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動でなければならず、これは「学術上の素養を背景とした一定水準以上の専門能力を必要とする活動」もしくは「日本国内の文化の中では育てられないような思考又 は感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を必要とする活動」である管理業務、プログラミングの開発、マーケティング業務、海外取引業務などをいい、単純作業や現場作業はこれに該当しません。
また海外法人(出向元)での業務内容も同様のものが求められます。つまり海外法人で工場のライン作業に専ら従事していた人を駐在員として派遣することは原則不可となります。
勘違いが多い点としては海外法人(出向元)での業務内容と日本法人(派遣元)での業務内容との関連性は求められないという事です。この点を勘違いして物事を進めてしまうと駐在員候補の選定について非常に範囲が狭まってしまう可能性があります。
日本人と同等以上の報酬
日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが要件となります。
報酬の定義は「一定の役務の提供の給付の対価として与えられる反対給付」をいい、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除く。)は含まないとされています。どの日本人と比べて同等であれば良いのか?その点については個々の企業の賃金体系を基礎に日本人と同等額以上であるか、また、他の企業の同種の職種の賃金を参考にして日本人と同等以上であるかについて判断します。同等額以上の報酬には何円以上という明確な基準はなく、前述の記載のように判断していく事となります。