汐留パートナーズ・ニュースレター 2019年07月号

はじめに

前回にて概要説明をした「収益認識に関する会計基準」(以下、収益認識基準)の公表を受け、平成30年度税制改正において法人税法の一部改正、及び2018年5月30日の法人税基本通達の一部改正がなされました。今回は収益認識に関して行われた税制改正の概要を、会計と比較しつつ、見ていきたいと思います。

改正法人税法第22条4項

改正法人税法22条第4項では、従来からある「収益の額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される」といった、いわゆる「公正処理基準」をベースとし、これに「別段の定めがあるものを除き」の文言が追加されました。そして当該「別段の定め」として、改正法人税法第22条の2が新設され、収益計上時期と収益計上額が明確化されました。なお、「別段の定め」として位置付けられた法22条の2は法22条第4項の「公正処理基準」規定に優先して適用されます。

改正法人税法第22条の2

新設された法22条の2では、以下のように収益計上時期と収益計上額を定めています。
① 収益計上時期
目的物の引渡し又は役務の提供の日に収益計上することを原則とし、それに「近接する日」に収益計上することも可能である旨、明記されました。よって基本的に会計と税務では同様の取扱いが認められることになります。
② 収益計上額
販売若しくは譲渡をした資産の引渡し時における価額又は提供した役務につき通常得るべき対価の額、即ち、販売等をした資産又は役務の「時価」により収益計上することとされました。この点、会計では企業が権利を得ると見込む対価の額を収益計上額と考える一方、法人税ではあくまでも販売した資産の販売価格又は提供した役務の提供価格をもって収益計上することから、両者の考え方は根本的に異なるものといえます。

改正法人税法基本通達におけるスタンス

従来から法人税に係る収益認識の具体的な処理規定は、法人税基本通達に置かれています。この点、改正法人税法基本通達では、原則として収益認識基準の考え方を受け入れつつ、公平な所得計算の観点から、過度に保守的な取扱いや、恣意的な見積りと考えられる場合には、税独自の取扱いを定めるという整備方針を示しています。

おわりに

今回は、収益認識に関して法人税上行われた改正の概要についてご説明しました。この点、法人税では、基本的に会計の考え方を受け入れるスタンスをとっていますが、消費税については大きな改正は行われておらず、基本的に従来通りのスタンスを維持しており、会計・法人税と消費税との乖離が懸念されています。実際の準備を進めるにあたっては、自社に関連する論点ごとに、会計・税務(法人税・消費税)の各々の面からの検討が必要といえます。ご不明点等がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

いよいよ発効する日中社会保障協定

◆9月1日から日中社会保障協定が発効に

「社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定(日・中社会保障協定)」の効力発生のための外交上の公文の交換が、5月16日に北京で行われました。これにより、令和元年9月1日から協定の効力が生ずることになります。
昨年5月に日中の間で署名が行われましたが、日本側では社会保障協定は条約に該当し、国会の承認を得ることを必要としたため、発効までに時間を要したものです。

◆社会保障協定はなぜ行われる?

社会保障協定は、①「保険料の二重負担」を防止するために加入するべき制度を二国間で調整する(二重加入の防止)、②保険料の掛け捨てとならないために、日本の年金加入期間を、協定を結んでいる国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、その国の年金を受給できるようにする(年金加入期間の通算)、ために締結しています(ただし、イギリス、韓国、イタリアおよび中国については、①の保険料の二重負担防止のみ)。
現在、日本は、ドイツ、イギリス、韓国、アメリカなど22カ国と協定を署名しており、うち19カ国は発効しています(署名済未発効の国:イタリア、中国、スウェーデン)。

◆日中社会保障協定の効果

これまで、日・中両国の企業等からそれぞれ相手国に一時的に派遣される被用者(企業駐在員等)等には、日・中両国で年金制度への加入が義務付けられていたため、年金保険料の二重払いの問題が生じていました。日中社会保障協定は、この問題を解決することを目的としており、この協定の規定により、派遣期間が5年以内の一時派遣被用者は、原則として、派遣元国の年金制度にのみ加入することとなります。要するに日本から中国に5年以内の期間を予定して派遣される人は、中国の年金制度に加入する義務は免除され、引き続き、国民年金または厚生年金に加入するということです。一方、中国から日本に同様に派遣されてくる人は、日本の年金制度への加入が免除され、引き続き、中国の年金制度に加入し続けることになるのです。
在中国在留邦人数(永住者を除く)は、121,095名(うち民間企業関係者(本人)70,135名)に上ります(平成29年10月現在)。協定が発効すれば、企業、駐在員等の負担が軽減されますし、さらに日本企業の競争力向上や日・中両国の人的交流が一層促進されることが期待されています。

Q 契約社員だから…

当社は,一般貨物自動車運送事業を営んでいます。トラック運転手を多数雇用しており
ますが,そのなかには無期雇用の者(正社員)のほか,有期雇用の者(契約社員)も存しま
す。もっとも,正社員も契約社員も,業務内容や責任内容に差異はありません。しかし,
正社員は,就業規則上,全国規模での転勤が予定されております。ところで,当社は,就業規則上で住宅手当と皆勤手当の制度を設けています。この制度上,いずれの手当も,正社員(無期雇用)に対してのみ支給される扱いとされています。そこで,契約社員(有期雇用)にはこれらの手当を支給しておりません。この度,当社の契約社員Aさんがこの点に異議を唱えております。Aさんの異議には法的根拠があるのでしょうか。

A 差異の合理性が必要です。

◆ 契約社員の処遇規制

近時,有期雇用を巡る法改正が続いています。その趣旨は,正社員との処遇格差の改善です。もっとも,現行法は,正社員と契約社員の労働条件が異なること自体を禁止するものではありません。その差異に合理性を要求するのです。そこで,会社としては,正社員と契約社員で差異を設ける場合,その合理性を説明できるようにしておくことが重要です。

◆ 住宅手当について

住宅手当の趣旨は,住宅費用の補助と理解されます。そして,本件会社では,正社員の
み全国規模の転勤が予定されていたことから,契約社員より住宅費用が多額になることが想定できます。そうなると,住宅手当が正社員のみに支給されることにもそれなりの合理性があるように思われます。

◆ 皆勤手当について

他方,皆勤手当は,皆勤を奨励するために支給される手当と解されます。そして,本件会社では,正社員も契約社員も同じ責任の下,同じ仕事をしているのですから,皆勤を推進する必要性において相違はないはずです。それゆえ,皆勤手当の支給差異について,合理的説明は難しいように思われます。したがって,皆勤手当に関する限り,Aさんの言い分は適切なものと理解されます。これまで契約社員と正社員で異なる処遇によってきた会社は多いように見受けられます。しかし,それらのひとつひとつの差異につき合理性の説明が可能か否か,あらためて検討すべき時期が来ているといえます。