外資系企業の日本法人設立におけるプロセスと論点とは
2022年12月1日
本記事では、外資系企業が日本に進出する際の1つの形態となる日本法人設立について詳しく説明いたします。別の形態となる日本支店や日本駐在員事務所との違いについても詳しく説明いたします。
日本法人とは?
外国会社が日本で活動をする際には、会社は必ず日本に活動の拠点を持たなければなりません。拠点には、日本法人(子会社)、日本支店、日本駐在員事務所の3つがあります。
この中の日本法人は、外国会社が出資者となり、日本に独立した法人を設立することを言います。市場調査、情報収集、物品の購入、宣伝広報活動、本社への情報の提供などを行う駐在員事務所と違って、日本法人は日本支店と同様に、直接的な事業活動ができることになります。
但し、日本法人は日本支店と違って、独立した法人格を持ちますので、日本法人から生じた債権債務は、そのまま日本法人に帰属することになります。債権債務が外国会社の本社に帰属する日本支店とは、この点が大きく違います。
日本法人と日本支店、日本駐在員事務所の違いは?
日本法人と日本支店、日本駐在員事務所の違いには、大きく分けて3つあります。
まず1つ目は、登記です。日本駐在員事務所は登記の必要はありませんが、日本法人は独立した法人格を持ちますから、設立登記しなければなりません。また日本支店にも、登記の義務があります。
2つ目は、営業活動です。先ほどご説明したように、日本法人は営業活動を行うことができますが、日本駐在員事務所は営業活動ができず、あくまでも市場調査、情報収集、物品の購入、宣伝広報活動、本社への情報の提供などに限定されます。なお、日本支店は日本法人と同様に、営業活動ができます。
最後の3つ目は、事業体です。日本法人は日本支店と同様に、事業体として認められますが、駐在員事務所は認められません。但し、事業体として認められている日本法人と日本支店には、以下のような違いがあります。
日本法人は、外国会社本社とは別の企業体として扱われます。従って、外国会社本社と別の取締役、監査役を選んで、就任してもらう必要があります。先ほどもご説明したように、営業活動によって生じた債権債務は全て日本法人に帰属し、外国会社本社には無関係なものとして取り扱われます。
一方で、日本支社は日本の法人としてみなされますが、日本支店はあくまでも外国会社と同一の事業体です。日本支店は、外国会社に従属するものと言う考え方ですから、日本支店で発生する債権・債務はすべて外国会社が負担することになります。当然、取締役、監査役、株主総会などの機関も、日本支店に設置する必要はありません。
日本支店設置についてはこちら
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日本法人を設立する手続きとは?
日本法人を設立する手続きは、以下のような流れで行います。
(1)設立事項の内容を検討・決定する。
(2)外為法の事前届出の必要性を検討する。
(3)外国会社本社から書類を取り寄せる。
(4)定款を作成し、認証を受ける。
(5)出資金を払い込む。
(6)設立登記を申請する。
(7)各種届出、報告を行う。
日本法人を設立する場合、まず法人の内容を検討し、決定します。決めるべき事項は、日本法人の名称(商号)、本店所在地、役員、事業内容、資本金の額などです。また、許認可が必要な事業を予定していれば、その申請の準備を行わなければなりません。さらに、外国人を役員として迎える予定がある場合には在留資格を申請する準備を行います。外国人が代表取締役に就任する場合には、「経営管理」の在留資格が必要です。
次に、日本法人の事業内容によっては外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく事前届出が必要となる場合があります。仮に事前届出が必須の場合には、届出後30日経過するまで設立登記ができませんので、事前の調査はかなり重要です。事前届出が必要な場合は、設立登記申請日より前6ヶ月以内に届出を行います。また、事前届出が不要な場合には、日本法人設立後に事後報告を行います。
さらに、外国会社本社から必要書類を取り寄せなければなりません。日本法人を設立する場合、一般的に外国会社が子会社を設立することになりますから、定款の認証を受ける際に公証役場に外国会社本社の「登記事項証明書」を提出する必要があります。他にも「設立証明書」、「営業許可証」などを外国会社本社から取り寄せ、さらに必要に応じて「宣誓供述書」を作成し本国で認証を受けます。これらの書類も定款認証の際に公証役場に提出することになります。
その後、日本法人の基本事項を記載した「定款」を作成します。そして、作成した定款に法的に問題がないというお墨付きをもらう必要があります。これが定款の認証です。公証役場に行って定款と必要書類を確認してもらい、公証人に定款の内容を確認してもらい、認証を受けます。
定款作成後に、出資金を出資する人(出資者)から銀行口座に払い込みを行います。なお、この場合の銀行口座の名義人は日本法人の発起人または設立時の代表取締役となります。また、出資金の払い込みを行う銀行は日本国内の銀行本支店(外国銀行も含む)、または日本の銀行の海外支店です。
必要な書類が揃ったら法務局に提出し、設立登記の申請を行います。登記の申請日が日本法人の設立日となります。登記は申請日から1~2週間程度で完了します。
設立登記が終わったら税務署への届け出、社会保険の加入手続きなどを行います。また、外国会社の支店設置は外為法に規定されている「外国投資家による対内直接投資等」に該当しますので、業種によっては事前または事後に財務大臣及び所轄官庁大臣に対して報告書を提出しなければなりません。
また、日本法人に常勤で滞在する人を海外から招へいする場合には、在留資格を取得する必要があります。例えば、本国の本社などに1年以上勤務した人が本国から派遣される場合には、「企業内転勤」の在留資格が必要です。また、日本で採用されて日本法人に勤務する場合には「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が必要です。なお、雇用する外国人が既に「永住」、「定住者」、「日本人の配偶者等」といった就労制限のない在留資格を持っている場合には、新たに在留資格を申請する必要はありません。
おわりに
本記事では、外資系企業が日本進出を図る際の拠点の1つとなる日本法人設立について紹介しました。そのほかの形態となる日本支店や日本駐在員事務所とは、登記や営業活動、事業体などの面で違いがありますので、よく検討した上で進める必要があります。
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